前回に引き続き、経済学の視点から飲食店のタバコ対策にスポットを当てる。国が検討している労働安全衛生法の改正や、各自治体による「受動喫煙防止条例」制定の動きは、飲食業界にどのような影響を与えるのだろうか。2010年に第31回石橋湛山賞を受賞した気鋭の経済学者で、早稲田大学政治経済学術院教授の若田部昌澄氏に話を聞いた。
――近年、神奈川県だけでなく、兵庫県も受動喫煙防止条例を制定するなど、条例を検討する自治体が増えています。労働安全衛生法の改正案や一部条例では、飲食店のタバコ対策に関しても規制が設けられていますが、経済学の見地からどう思われますか
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若田部:道路、学校や美術館、公共交通機関など他に代替の利かない公共の場での喫煙には、喫煙エリアを厳格に区切るなどの規制も必要かもしれません。しかし、飲食店については、公共の場といえるのか疑問が残ります。飲食店は、店主が営利目的で営業しているものです。タバコの対策についても、店主が自らの判断で、店舗にとって最も良いと思われる選択をすべきではないでしょうか。
具体的には、喫煙、分煙、禁煙といった主に3つの選択肢になると思いますが、喫煙者は禁煙の店を避けるでしょうし、その逆もある。飲食店としては一定の層のお客が減るリスクがある一方で、特定の層をターゲットにした集客も可能かもしれません。分煙にすれば、両方のお客が来てくれるかもしれませが、設備投資によるコストもかかります。
――どんな対策を行えばいいのか、判断に迷うところですね
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若田部:早稲田大学の教職員食堂は全面禁煙ですが、大学の近くの喫茶店には店頭で「喫煙可能です」という表示をしている店があります。その喫茶店は、大学の教職員の喫煙ニーズに合わせて対策を取っていると考えられます。お店は、立地や店舗の雰囲気などを考慮して、メリット、デメリットを洗い出して検討し、それぞれに喫煙、分煙、禁煙といった自店のタバコ対策を選択すればよいと思います。あわせて店頭に自店の喫煙ルールを表示すれば、お客が状況に合わせて判断し、お店を選ぶことができます。条例や法令等で行政や政府が方針を決めた場合、何が問題かといえば、お客の選択肢が1つだけになってしまうことです。例えば、全てのお店が禁煙になってしまうと、飲食店に行く機会が減る人も出てく� ��でしょう。もし、禁煙にして客が増えた事例が個別であったとしても、外食産業全体のパイが小さくなるという弊害が生じる可能性は十分にあり得ます。
――規制が望ましくないとすれば、どのような対策が求められるのでしょうか
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若田部:市場原理に任せることではないでしょうか。もしも、全面禁煙にすることが利益になるのであれば、とっくの昔に全てのお店が全面禁煙になっているはずです。しかし、現実は異なります。飲食業界は、他の業種と比較しても、激しい競争が行われています。例えば、ラーメン業界は、特に競争が激しいことから、各店がそれぞれ工夫を凝らし、他の店にはないオリジナルのラーメンを追求しています。その結果、潰れる店も多い一方で、顧客の支持を得られた店は生き残っているわけです。同じことが、タバコについても言えるはずです。
――市場原理に任せることで、自然とお客のニーズに合った姿になるということですね
若田部:市場原理というとお金だけというイメージがありますが、実は多様性を保障する仕組みでもあります。飲食業界には、大衆食堂もあれば、大きめのソファーを用意してくつろいでもらう高級店もあります。大衆食堂で禁煙を実施すれば、その店の客層に対してマイナスに働くでしょう。逆に、ソファーでくつろいでもらう店であれば、喫煙席と禁煙席をしっかりと分ける必要があるかもしれないし、あるいは禁煙の店があってもいいかもしれない。市場原理があるおかげで、多様なニーズに対応することが保障されているのです。
また、条例や法令の制定では、メリット、デメリットも含めて、実証的な数字も挙げて比較、検討すべきだと申し上げましたが、市場というのは個々のお店やお客が勝手にトレードオフを実施しているのです。例えばタバコを吸わないお客が、全席喫煙の店だけどギョーザが美味い店に行くのか、それとも味は落ちるけど禁煙の店に行くのかは、各自が判断しています。政府がその選択をするとなると、自由を制限することになり、さらに言うなら、不十分な議論の結果生まれた規制を、市場に押し付ける事になり得るのです。
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