2007年8月28日
ワールド・コミュニティー・グリッド
デング熱、ウェストナイル脳炎、C型肝炎の治療法発見に着手
研究者の見解では、治療法発見に要するコンピューター稼働時間5万年を1年間に短縮
[米国テキサス州ヒューストン 2007年8月23日(現地時間)発]
IBM(本社:米国ニューヨーク州アーモンク、会長:サミュエル・J・パルミサーノ、NYSE:IBM)、テキサス大学医学部(University of Texas Medical Branch:UTMB)、シカゴ大学は23日(現地時間)、現在世界中に蔓延する恐れのある致死性の伝染疾患の流行に歯止めをかけるため、デング熱、ウェストナイル脳炎、C型肝炎や、黄熱病など多くの関連疾患を治療・治癒する医薬品の開発を目指す、前例のない研究活動を開始しました。
世界中の熱帯および亜熱帯地域全体に蔓延しているデング熱や、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、そして最近では米国でも感染例が見られるウェストナイルウィルスは、治療薬が発見されていません。これらの疾病は、主に感染した蚊を媒介して大人にも子どもにも伝染し、何百万人もの疾患の原因となり、毎年数千人の死者を出しています。これらの感染症は、有効な治療法が存在せず、先進国でも発展途上国でも厳しい状況にある医療関係者に重い� �担となってのしかかっています。
意識睡眠麻痺
「Discovering Dengue Drugs - Together(力をあわせてデング熱の治療薬を発見しよう)」というこのプロジェクトは、ワールド・コミュニティー・グリッド(World Community Grid)の巨大な演算能力を利用するものです。ワールド・コミュニティー・グリッドとは、数十万人もの個人が、自分たちのコンピューターの使っていない時間を寄付し、これによって世界でも5本の指に入る強力なスーパーコンピューターに匹敵する、仮想スーパーコンピューターを構成するものです。デング熱、ウェストナイル脳炎、C型肝炎、黄熱病などを引き起こすウィルスの増殖を止める医薬品を見つけるために、ワールド・コミュニティー・グリッド上で演算が実行されます。徹底的なコンピューター解析を通じていったん化合物が特定されれば、研究者は研究所や病院でこうした医薬品のテストを開始し、化合物の有効性を判定することができます。
世界保健機関の熱帯病研究訓練特別計画を担当するAyo Oduola博士は、次のように語っています。「感染症は疾病を引き起こすだけでなく、例えばデング熱は深刻であり、何百万の人々に影響を与える公衆衛生問題を増長しますがその治療薬はない、といった貧窮をも生みだします。4つのデング熱ウィルスをより良く理解し、疾病の負担を減らして生命を救うことができる薬剤を開発するためには、継続的な研究が必要なのです。」
DRフィル減量ソリューション
研究者らは、有効な抗ウィルス剤を発見するのに必要な演算を完了させるには、約5万年ものコンピューター稼働時間が必要になると試算しています。しかし、このプロジェクトをワールド・コミュニティー・グリッド上で実行すれば、1年未満で完了する可能性があります。寄付によって提供される演算能力が増えれば増えるほど、研究の速度が速まることになります。
UTMB生化学准教授で、主任研究員を務めるStan Watowhich博士は、次のように語っています。「ワールド・コミュニティー・グリッドがなければ、これまでの医薬品開発研究にとってはむしろ障害となってきた、不正確な単純化による仮説を立てるしかなかったでしょう。ワールド・コミュニティー・グリッドによって、正確な生化学の成果を生み出す包括的な演算を実行できるため、こうした世界規模の深刻な疾患の治療法を発見する上で最良の機会を手にすることができるのです。」
このプロジェクトの第1段階では、ウィルスの増殖を可能にする一次タンパク質のうち、1種を対象としています。このタンパク質を、ウィルスの増殖を阻止する可能性のある、600万を超える医薬品分子のデータベースと照合します。第2段階では、より困難な作業となります。どの医薬品分子がウィル スタンパクと最も緊密に結合するのか、つまりウィルス増殖を阻止する最良の機会をもたらすものであるのかを予測します。こうした従来は不可能だった演算により、研究者は数十種類の分子を特定し、研究所や病院に活動の場を移してテストを開始することができるのです。ここまで来れば、市場向けに医薬品を開発する段階となります。
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IBM インターナショナル・ファウンデーションの理事長を務めるコーポレート・アフェアーズ&コーポレート・シチズンシップ担当バイス・プレジデント、スタンレー・リトウ(Stanley Litow)は次のように述べています。「コンピューターを使ってインターネットにアクセスできる人ならば誰でも、この非常に重大な健康上の問題に取り組むソリューションの一翼を担うことができます。使っていないコンピューター・パワーを寄贈するだけで、この研究チームが治療薬発見の次の段階へと歩みを進める上で大きな力となることができます。たとえば、このプロジェクトの第1週の間に10万人のボランティアが参加を約束することで、演算を完了させるのに必要な時間を50%短縮させることができるのです。」
個人が使っていないコンピューターの時間をこのプロジェクトに寄贈するには、ワールド・コミュニティー・グリッドに登録し、無償の小規模ソフトウェア・プログラムを自分のコンピューターにインストールし� �す。たとえば昼食時などにコンピューターがアイドル状態になると、コンピューターはワールド・コミュニティー・グリッドのサーバーにデータを要求します。データを受け取ると、コンピューターはそれを使って治療薬を発見するための演算を実行し、結果をサーバーに返して、次の新しい作業データを送るよう促します。参加者のコンピューターが使用されていることは、スクリーン・セーバーで表示します。
このプロジェクトのために、テキサス州ヒューストンのラニア・ミドルスクール(Lanier Middle School)に勤務するWatowich博士は、同校の第8学年の生徒たちの書いた作品を元にした特製のスクリーン・セーバーを開発しました。世界をより良くするための方法に頭をしぼった生徒たちの作品は、この研究プロジェクトとワールド・コミュニティー・グリッドの人道的な取り組みを補完しています。Watwich博士は、生徒たちに現代の生化学研究がもたらす効果を理解してもらい、彼らにもそれに対して力になれるという感覚を与え、生徒が自分たちの考えと行動を通じて、違いを生み出すことができることを教えたいという望みを語っています。
現在公開されている最も大規模な人道的な課題解決を目的とするグリッドであるワールド・コミュニティー・グリッドは31万5千人以上もの大規模な参加者を擁し、70万台以上のコンピューター が接続しています。予測では2008年までに世界に存在するコンピューターは10億台に上り、ワールド・コミュニティー・グリッドが持つ演算能力の可能性は大幅に拡大し、さらに人道上の効果を発揮することが強く期待されています。ワールド・コミュニティー・グリッドでは現在までに、HIV/AIDSの研究をわずか6カ月間で完了させたFightAIDS@Home など7つのプロジェクトが実行されています。その他にも新たなプロジェクトが現在準備されています。
以 上
当報道資料は、2007年8月23日(現地時間)にIBM Corporationより発表されたプレスリリース「IBM and University Scientists Launch Global Computing Effort to Find Cures for Dengue, West Nile, and Hepatitis C Diseases」(原文: )の抄訳です。
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