2012年4月27日金曜日

リンパ腫


リンパ腫

■サブステージ-aハイグレード多中心型リンパ腫の犬に対する診断的評価と推奨される治療:獣医師の調査結果
Diagnostic evaluation and treatment recommendations for dogs with substage-a high-grade multicentric lymphoma: results of a survey of veterinarians
Veterinary and Comparative Oncology, Article first published online: 2 MAR 2012
R. C. Regan, M. S. W. Kaplan, D. B. Bailey

この研究の目的は、サブステージ-a ハイグレード多中心型リンパ腫の犬に対し、現行の最初に推奨される診断および治療に関して獣医師に調査することだった。
調査は2009年Veterinary Cancer Society conferenceで行われ、犬のリンパ腫に対して提供するデモグラフィック情報、最初のステージング診断方法、勧める治療を訪ねた。
最も一般的な推奨されるステージング診断方法は、CBC(100%)、生化学検査(100%)、尿検査(85%)、リンパ節細胞診(88%)、胸部エックス線検査(84%)、免疫表現型の検査(76%)、腹部超音波検査(75%)だった。よく使用される第一線のB-細胞プロトコールは、L-アスパラギナーゼ、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンの組み合わせだった(L-CHOP、51%)。CHOP(30%)および他のCHOPベースのプロトコール(12%)も使用されていた。回答者の31%はB-とT-細胞リンパ腫を違う方法で治療していた。プロトコールの期間は16週以下から2年以上と幅があった。
リンパ腫で現行のステ� �ジングおよび勧められる治療はさまざまである。推奨方法を標準化できるように考慮すべきである。(Sato訳)

■猫リンパ腫の治療中に見られる体重変化の予後的意義
Prognostic significance of weight changes during treatment of feline lymphoma.
J Feline Med Surg. December 2011;13(12):976-83.
Erika L Krick; Renee H Moore; Rachel B Cohen; Karin U Sorenmo

この研究の目的は猫のリンパ腫治療中の体重変化の予後的意義を検討することだった。2つ目の目的は、基準となる体重、細胞の種類、部位に従って体重変化を比較することだった。
1995年から2007年の間に化学療法でリンパ腫を治療した209頭の記録を評価した。シグナルメント、細胞の種類、リンパ腫の部位、基準の体重、治療中の体重、転帰の情報を収集した。リンパ腫特異的生存率(LSS)を基準の体重と治療中の体重変化に従い比較した。長期体重変化を細胞の種類(小型、大型)、部位(消化管、非消化管)および基準の体重に従い比較した。
1か月で体重が5%以上落ちた大型細胞リンパ腫の猫は、体重増加あるいは体重が安定している猫よりも有意にLSSが短かった(P=0.004)。長期の体重変化の比率は基準となる体重群によ り有意な違いが見られた。それらの所見は、猫の大型細胞リンパ腫における体重減少の予後的重要性を示している。(Sato訳)

■犬の緩慢性リンパ腫の臨床的、組織病理学的、免疫組織化学的特徴
Clinical, histopathological and immunohistochemical characterization of canine indolent lymphoma
Veterinary and Comparative Oncology, Article first published online: 2 FEB 2012
K. E. Flood-Knapik, A. C. Durham, T. P. Gregor, M. D. Sanchez, M. E. Durney, K. U. Sorenmo

緩慢性リンパ腫は全ての犬のリンパ腫の29%からなる。しかし、そのサブタイプや生物学的挙動に関して限られた情報しかない。
この回顧的研究は、緩慢性リンパ腫の犬7 5頭の臨床的特質、組織病理学および免疫組織化学的特徴、治療、結果、予後因子について述べる。WHO組織病理学的分類およびCD79a、CD3、Ki67、P-糖蛋白(P-gp)に対する免疫組織化学(IHC)検査を実施した。最も一般的な組織病理学的サブタイプは、T領域、61.7%(MST33.5ヶ月)で、続いて辺縁帯、25%(MST21.2ヶ月)、P=0.542だった。予備的組織病理学的分類に対するIHCの追加で症例の20.4%は診断が見直された。全身療法は生存性に影響しなかった、P=0.065。CHOPベースの化学療法によるMST21.6ヶ月と比べ、クロラムブシルとプレドニゾンで治療した犬はMSTに届かなかった、P=0.057。総MST4.4年はこれが緩慢性疾患だと実際に確認させる。しかし全身療法の影響は、前向き試験を通して判定すべきである。(Sato訳)

■局所に生じた口腔の粘膜皮膚型リンパ腫の犬の治療に用いた放射線療法:14症例
Radiotherapy in the management of localized mucocutaneous oral lymphoma in dogs: 14 cases.
Vet Comp Oncol. 2011 Apr 21.
Berlato D, Schrempp D, Van Den Steen N, Murphy S.

口腔の粘膜皮膚型リンパ腫は犬において稀である。通常は、長期的なコントロールは外科手術でも化学療法でもうまくできない。
この研究の目的は、局所に生じた口腔の粘膜皮膚型リンパ腫の犬を放射線療法で治療した場合の生存を後向きに評価するものである。口腔のリンパ腫と診断され放射線療法を行なった犬を3つの施設の症例データベースで検索した。全身性の疾患があった犬は除外した。生存は、Kaplan-Meier法で計算し、予後変数は、ログランク検定で解析した。
14頭の犬を用いた。生存期間の平均は、1129日(95%信頼区間、711-1546日)で、中央値は770日であった。放射線療法に対する全体の反応率は67%であった(5頭は完全寛解で3頭は部分寛解であった)。リンパ節転移が認められなかった犬(P = 0.002)と放射線療法に完全寛解した犬(P = 0.013)では、延命効果が認められた。放射線療法は耐性が高く、局所的な犬の口腔リンパ腫の効果的な治療であった。(Dr.Taku訳)

■犬リンパ腫のチミジンキナーゼ分析
Thymidine kinase assay in canine lymphoma
Veterinary and Comparative Oncology, Article first published online: 8 DEC 2011
J. W. Elliott, P. Cripps, L. Blackwood

この研究の目的は、リンパ腫の犬における最初の寛解期間(DFR)あるいは生存性にチミジンキナーゼ(TK)が相関するかどうか、および初期TKレベルがステージ、サブステージと相関するかどうかを評価すること、加えて診断時のTKレベルが免疫表現型と相関するかどうかも分析することだった。単純なリンパ腫を治療している73頭の犬でTKを分析し、その後再び治療後に分析した;47%の犬は初期TKが参照範囲よりも高かった。B-細胞リンパ腫の犬の初期TK活性はT-細胞リンパ腫の犬よりも高かった。TKレベルはより高いステージの疾患の犬でより高いというわけではなく、治療前のTK活性はDFRあるいは生存性に関係しなかった。診断時にTKは上昇していても、寛解中に参照範囲に降下した。診断時に53%の犬のTKは正常で、過去の報告より� �高い数字だった。リンパ腫の犬でTKの有用性を調査する追加研究が必要である。(Sato訳)

■T-細胞リンパ腫の1頭の猫に見られた呼吸困難と肺の硬化
Dyspnoea and pulmonary consolidation in a cat with T-cell lymphoma.
J Feline Med Surg. October 2011;13(10):772-5.
Alexa L Brown; Julia A Beatty; Robert G Nicoll; Tina Knight; Mark B Krockenberger; Vanessa R Barrs

13歳の去勢済みオスの家猫短毛種が急性の呼吸困難を呈した。胸部エックス線写真で顕著な両側尾側肺葉の硬化を認めた。病理組織検査で肺、腎臓、消化管関与の解剖学的に混合T-細胞リンパ腫の診断が確認された。
猫リンパ腫の症例で肺の関与は珍しく、肺リンパ腫のエックス線所見は非常に不定である。猫の原発性肺腫瘍で肺葉効果は延べられているが、過去に肺のリンパ腫の関与はなかった。この珍しい症状は、猫の重度気管支肺疾患の原因としてリンパ腫の可能性があることを臨床医に警告するものである。(Sato訳)

■ハイグレード多中心型リンパ腫の犬における長期生存の予測因子
Predictors of long-term survival in dogs with high-grade multicentric lymphoma.
J Am Vet Med Assoc. 2011 Feb 15;238(4):480-5.
Marconato L, Stefanello D, Valenti P, Bonfanti U, Comazzi S, Roccabianca P, Caniatti M, Romanelli G, Massari F, Zini E.

目的:ハイグレード多中心型リンパ腫の犬の生存を予測する因子を決定する

研究手法:後向きコホート研究

動物:2000年から2009年の間に4つの動物病院で評価された127頭のハイグレード多中心型リンパ腫の犬

方法:化学療法で治療しており、完全に病期分類可能であったハイグレード多中心型リンパ腫の犬を同定するために、カルテを調査した。収集したデータは、シグナルメント、病歴、血液学的所見、腫瘍の特徴、治療、転帰だった。診断後2年以上生存した場合を長期生存と定義した。2年以上生きた犬との関連について変数を解析した。

結果:用いた127頭の犬の中で、13頭 (10%) が2年以上生存し、生存期間の中央値は914日であった(範囲は740-2058日)。3年、4年、5年生存率は、4%、3%、1%であった。長期生存した13頭の犬の中で11頭が、診断時に、体重10kg以上、PCV35%以上、イオン化カルシウムが高値ではない、胚中心芽細胞性リンパ腫であり、免疫表現型がB細胞型 、骨髄への浸潤がない、リンパ腫のステージがIからIV、あらかじめコルチコイドで治療されていない、という条件を示した。2年以上生きられなかった114頭の犬のうち26頭(23%)において同じ条件の組み合わせが認められ、長期生存の陰性的中率は97.8%であった。長期生存犬の6頭のうち4頭は研究期間中に他の癌でなくなり、そのうちの3頭は骨肉腫であった。

結果と臨床的な関連:診断時に前述した変数の組み合わせがないということは、リンパ腫の犬が2年以上生存できないことを予測するのに役に立つであろう。他の種類の腫瘍、とくに骨肉腫は、長期的に生存したイヌにおいて生じることがある。(Dr.Taku訳)

■犬における高グレード多中心型リンパ腫のステージングと治療:最近の発達と未来の見込み
The staging and treatment of multicentric high-grade lymphoma in dogs: a review of recent developments and future prospects.
Vet J. April 2011;188(1):34-8.
Laura Marconato

近年、犬のリンパ腫の生物学の理解でかなりの進歩があり、結果的に個別に考えられた治療や分類シェーマの質が増強されている。しかし、多剤併用化学療法で完全緩解にいたるが、この腫瘍の死亡率は高いままである。このレビューは、犬の高グレード多中心型リンパ腫のステージング、従来のおよび新しい治療戦略(化学療法、骨髄移植、放射線療法、分子標的物質など)、再発あるいは難治性症例の管理に焦点を当てている。(Sato訳)

■犬の再燃性リンパ腫の治療でフロリダ大学ロムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジンおよびプレドニゾン化学療法プロトコールの評価
Evaluation of the University of Florida lomustine, vincristine, procarbazine, and prednisone chemotherapy protocol for the treatment of relapsed lymphoma in dogs: 33 cases (2003-2009).
J Am Vet Med Assoc. July 2011;239(2):209-15.
Christine E Fahey; Rowan J Milner; Karri Barabas; David Lurie; Kelvin Kow; Shannon Parfitt; Sarah Lyles; Monica Clemente

目的:犬の難治性リンパ腫のレスキュープロトコールとして、過去に評価されたロムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾン(LOPP)のコンビネーションの修正法の毒性および効果を評価すること

構成:回顧的症例シリーズ

動物:細胞学的あるいは組織学的にリンパ腫と診断され、導入化学療法プロトコールに耐性を示した犬33頭

方法:ロムスチンはプロトコールの0日目に投与した。ビンクリスチンは0日目と14日目に投与した。プロカルバジンとプレドニゾンは0-13日目を通して投与した。このサイクルを28日毎に繰り返した。

結果:フロリダ大学LOPPプロトコールの開始から中止までの期間中央値は84日(範囲10-308日)だった。総生存期間中央値は290日(範囲51-762日)だった。このプロトコールの全体の反� �率は61%(20/33)で、36%(12)は完全反応、24%(8)は部分反応だった。中毒率は過去に発表されたLOPPプロトコールよりも低かった。

結論と臨床関連:フロリダ大学LOPPプロトコールは、リンパ腫の犬のレスキュープロトコールとして、メクロレタミン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾンプロトコールに代わって使用できると思われる。(Sato訳)

■犬と猫の消化管リンパ腫
Alimentary lymphoma in cats and dogs.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. March 2011;41(2):419-32.
Tracy Gieger

消化管(GI)に関係する病気の急性症状あるいは長期病歴を持つ動物において、消化管リンパ腫を疑うべきである。併発疾患を確認するのに全身の病期検査(CBC/化学/尿/チロキシン濃度/胸部エックス線写真)を用いる。腹部超音波検査は腸壁の肥厚、マス病変、併発臓器関与、リンパ節腫脹、腹部リンパ節腫脹を実証するのに有効である。超音波所見は、診断組織学的標本を得ることを目的とする開腹、腹腔鏡、あるいは内視鏡などの次の検査をすべきか決定するのに使用できる。組織病理学的に、リンパ腫はリンパ芽球あるいはリンパ球性と思われる。ステロイドおよび栄養サポートを含む化学療法は、消化管リンパ腫の管理で必須である。(Sato訳)

■多中心型T-細胞リンパ腫のCHOP化学療法による治療
CHOP chemotherapy for the treatment of canine multicentric T-cell lymphoma.
Vet Comp Oncol. March 2011;9(1):38-44.
R B Rebhun; M S Kent; S A E B Borrofka; S Frazier; K Skorupski; C O Rodriguez

多中心型T-細胞リンパ腫の犬は、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾンのCHOP化学療法プロトコールで一般的に治療される。
この研究の目的は、多中心型T-細胞リンパ腫の犬に対するCHOP化学療法の使用を評価することだった。この特定の部分集合の犬における予後因子の確認は第2の関心事だった。24頭中23頭はSHOP化学療法に反応し、それらの犬は中央値146日の間プロトコールを継続した。ステージ、サブステージ、高カルシウム血症あるいは縦隔頭側マスのエックス線所見を含む無進行生存性(PFS)に関係する変数はなかった。全ての犬の総生存期間(OST)中央値は235日だった。来院時に血小板減少症だった犬は、有意に長いOSTを示した(323日v.s.212日、P=0.01)。(Sato訳)

■犬の第三眼瞼結膜の粘膜関連リンパ組織リンパ腫の1例
Mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma of the third eyelid conjunctiva in a dog.
Vet Ophthalmol. January 2011;14(1):61-5.
Il-Hwa Hong; Sun-Hee Bae; Sang-Gwan Lee; Jin-Kyu Park; Ae-Ri Ji; Mi-Ran Ki; Seon-Young Han; Eun-Mi Lee; Ah-Young Kim; Sang-Young You; Tae-Hwan Kim; Kyu-Shik Jeong

4歳の避妊済みメスのコッカースパニエルが、左第三眼瞼の突出で来院した。両眼の第三眼瞼を反転すると、球表面に小葉に別れたマスが存在した。左第三眼瞼はより大きく突出していた。眼球あるいは全身性関与と明らかな関連はなかった。左第三眼瞼の腫瘍を切除し、組織検査を行った。組織学的に辺縁帯を形成するリンパ系細胞に囲まれたリンパ濾胞の過形成があった。それらのリンパ系細胞は所々で結膜上皮内に浸潤していた。濃縮および崩壊性の核を伴ういくつかのアポトーシス体がリンパ濾胞の胚中心に観察された。有糸分裂像はまれに見られた。免疫組織化学的に、腫瘍細胞はCD79aを発現したが、CD3はなかった。第三眼瞼の粘膜関連リンパ組織(MALT)の結節外辺縁帯B細胞リンパ腫の診断が、組織学および免疫表現型的特徴� �もとになされた。
1年の経過観察で、左第三眼瞼の切除部分にマスの再発所見は見られず、右第三眼瞼の残存腫瘍の大きさに変化はなかった。その犬にはそれらの腫瘍をのぞき明らかな所見はなく、全身性関与の所見もなかった。著者の知るところでは、これが1頭の犬に見られた第三眼瞼のMALTリンパ腫の最初の報告である。(Sato訳)

■犬のリンパ腫に対するL-CHOPとCCNUおよびMOPPを組み込んだL-CHOPプロトコール(L-CHOP-CCNU-MOPP)の比較
Comparison between L-CHOP and an L-CHOP protocol with interposed treatments of CCNU and MOPP (L-CHOP-CCNU-MOPP) for lymphoma in dogs.
Vet Comp Oncol. December 2010;8(4):243-53.
K M Rassnick; D B Bailey; E K Malone; J L Intile; M A Kiselow; A B Flory; L L Barlow; C E Balkman; S M Barnard; A H Waite

CCNUとMOPPを組み込んだL-CHOPプロトコール(L-CHOP-CCNU-MOPP)をステージIII-Vリンパ腫の犬66頭で評価した。結果は過去のL-CHOPプロトコールで治療した71頭のグループと比較した。完全寛解(CR)率(それぞれ85および80%)は、プロトコール間で有意差がなかった(P=0.48)。L-CHOP-CCNU-MOPPで治療した犬の最初のCR持続期間は有意に長かった:中央値317日;2-年CR率35% v.s. 中央値298日;2-年CR率13%、P=0.05)。L-CHOP-CCNU-MOPPプロトコールで、サブステージ-bの犬は、サブステージ-aの犬よりも再燃する危険が4.3倍高かった(P=0.002)。化学療法の副作用に関係する消化管への影響の頻度は、プロトコール間で違いはなかった(P=0.77)。L-CHOP-CCNU-MOPPで治療した犬において好中球減少症(主としてCCNU後)がより頻繁に発生した(P<0.001)。
つまり、L-CHOPプロトコールと比較すると、L-CHOP-CCNU-MOPPプロトコールのほうが最初のCR持続期間の延長を示したが、この所見の妥当性は、臨床判断を条件としているかもしれない。(Sato訳)

■1頭のミニチュアダックスフントに見られた原発性骨格筋リンパ腫の長期生存性
Long term survival of primary skeletal muscle lymphoma in a miniature dachshund.
J Vet Med Sci. May 2010;72(5):673-7.
Yoshinori Takeuchi; Yasuhito Fujino; Yuko Goto-Koshino; Koichi Ohno; Kazuyuki Uchida; Hiroyuki Nakayama; Hajime Tsujimoto

8歳のミニチュアダックスフントが、右の大腿部筋肉のマスと食欲不振を呈した。マスの細胞診で、多形の濃い核と狭い薄青の細胞質を持つ多数の小型リンパ系細胞を認めた。組織病理検査で腫瘍性リンパ系細胞が骨格筋で増殖し、筋肉構造と置き換わっていることが分かった。免疫組織化学および遺伝子検査で、多形小細胞型T-細胞lowグレードと分類される原発性骨格筋リンパ腫の確定診断がなされた。多剤化学療法で少なくとも3回の再燃が見られたが、初診から713日生存した。(Sato訳)

■犬リンパ腫における用量増強、メンテナンスフリーCHOPベース化学療法プロトコールに関係する結果と毒性
Outcome and toxicity associated with a dose-intensified, maintenance-free CHOP-based chemotherapy protocol in canine lymphoma: 130 cases
Veterinary and Comparative Oncology, Volume 8, Issue 3, pages 196-208, September 2010
K. Sorenmo, B. Overley , E. Krick, T. Ferrara, A. LaBlanc, F. Shofer

ペンシルバニア大学動物病院で犬リンパ腫に対する用量増強/用量高濃度化学療法プロトコールを計画し、実行した。この研究で、我々はこのプロトコールで治療した130頭の犬の臨床特性、予後因子、効果、毒性を述べる。大半の犬はステージ疾患(63.1%ステージV)、サブステージb(58.5%)が進行していた。進行までの時間中央値(TTP)およびリンパ腫特異生存期間はそれぞれ219日と323日だった。それらの結果は、過去のより少ない用量増強プロトコールと同様である。サブステージは生存に対する有意な負の予後因子だった。毒性の発生率は高く、53.9%の犬が減量を必要とし、45%の犬が治療を延期した。減量および延期を必要とした犬は、有意に長いTTPおよびリンパ腫特異生存期間を示した。それらの結果は、用量増強は重要だが最適な結 果に対し個々の患者の毒性に従い調整する必要があることを示唆する。(Sato訳)

■犬リンパ腫のドキソルビシンおよびシクロフォスファミドによる治療:無作為プラセボ対照試験
Doxorubicin and cyclophosphamide for the treatment of canine lymphoma: a randomized, placebo-controlled study
Veterinary and Comparative Oncology Volume 8, Issue 3, pages 188-195, September 2010
J. C. Lori, T. J. Stein, D. H. Thamm

ドキソルビシンで治療した犬リンパ腫の生存期間(STs)中央値は5.7-9ヶ月である。多剤プロトコールで治療した犬はより長いSTsを示すため、我々はリンパ腫の犬でシクロフォスファミドの追加が容認できる毒性で維持しながら、結果を改善させるかどうかを評価した。
ステージIII-Vの多中心型リンパ腫の犬32頭を3週間毎の5回のドキソルビシン投与と最初の4週間のプレゾニゾン漸減投与で治療した。同時に無作為にシクロフォスファミドあるいはプラセボを投与した。17頭の犬にドキソルビシンとプラセボ、15頭の犬にドキソルビシンとシクロフォスファミドを投与した。反応、毒性、進行フリー期間(PFI)およびSTを評価した。
ドキソルビシンとシクロフォスファミドの組み合わせはよく許容し、ドキソルビシン単独以上に副作用� �起こすことはなかった。シクロフォスファミド投与犬で結果に数的改善が見られたにもかかわらず、シクロフォスファミドの追加は反応率、PFI、STに統計学的改善を示さなかった。(Sato訳)

■リンパ腫の犬において再発を予測する乳酸脱水素酵素活性の連続測定の臨床関連
Clinical relevance of serial determinations of lactate dehydrogenase activity used to predict recurrence in dogs with lymphoma.
J Am Vet Med Assoc. May 2010;236(9):969-74.
Laura Marconato, Giampaolo Crispino, Riccardo Finotello, Silvia Mazzotti, Eric Zini

目的:リンパ腫の犬における血清乳酸脱水素酵素(LDH)活性の連続測定が、転帰を予測および疾患進行の早期認識を補助するのに使用できるかどうかを評価する

構成:前向きコホート研究

動物:リンパ腫の犬50頭

方法:新規にリンパ腫と診断された犬、あるいは治療されていないリンパ腫の犬のLDH活性を測定した。LDH活性は初回診断時、化学療法完了時、化学療法から1、3、6ヶ月後に測定した。治療反応と再発を記録した。化学療法の終了時、および各タイムポイントで、LDH活性上昇を伴う完全寛解の犬の比率を連続45日あるいは90日以内に再発した犬と再発しなかった犬で比較した。無病期間および生存期間を予測するため入院時のLDH活性の使用を評価した。

結果:化学療法完了時、化学療法から1ヵ月後、連続45� �の間に再発したLDH活性上昇を伴う完全寛解の犬の比率(それぞれ3/9、7/9)は、再発がない犬の比率(それぞれ0/32、1/26)よりも有意に高かった。3あるいは6ヶ月時、45日以内に再発しなかった1頭だけ、LDH活性が上昇していた。診断時のLDH活性上昇は無病期間および生存期間に関与しなかった。

結論と臨床関連:LDH活性の測定は、リンパ腫の犬の再発を確認するのに役立つと思われる。再発の予測はレスキュー療法開始の適切な理由となる。(Sato訳)

■犬の皮膚上皮親和性T-細胞リンパ腫:30症例の概説
Canine cutaneous epitheliotropic T-cell lymphoma: a review of 30 cases
Jacques Fontaine, Marianne Heimann and Michael J. Day

この回顧的研究では、犬皮膚上皮親和性T-細胞リンパ腫(CETL)のヨーロッパでの30症例に見られた臨床的、組織学的そして免疫組織化学的兆候を概説した。臨床症状はかなり様々で、亜型との関連性はなかった。鱗屑(60%)を伴うび慢性紅斑(86.6%)と局所的な色素脱失(50%)が最も一般的な病変であった。皮膚は一律に影響をうけていたが、皮膚粘膜接合部あるいは粘膜が症例の50%で影響を受けていた。診断した時点での年齢中央値は10歳 (標準偏差 2.79, 範囲 4?15)で、発現と最終診断の期間中央値は5ヶ月(標準偏差 3.79, 範囲 0-12)だった。5症例はビションフリーゼだった。どの症例においても慢性皮膚炎の既往歴はなかった。
組織学的に、症例の86.7%で濾胞上皮は影響を受けていた。主に濾胞性疾患を伴った1例は向濾胞性菌状息肉腫(MF)と考えられたが、濾胞性ムチン沈着症は観察されなかった。表皮性ポトリエ微小膿瘍は一般的ではなかった(23.3%)。汗腺は症例の70%で浸潤していた。免疫組織化学的検査では、すべての症例でT細胞腫瘍が確定できた。腫瘍基部ではB細胞が各細胞として浸潤したか、あるいは直線的なバンドを形成したか、異所性濾胞を形成した。Ki67 標識は、増殖の指標の範囲を明らかにしたが、重症度とは関連がなかった。標準的な菌状息肉腫(MF)の確定診断は犬の40%、MF d'embleは36.7%、全身性パジェット様細網症が20%、局所性パジェット様細網症が1症例(ウォランジェ・コロップ・パジェット様細網症)でなされた。診断後の生存期間中央値は6ヵ月で、これは治療(ロムスチンあるいはプレドニゾロン)であまり変化しなかった。(Dr.Kawano訳)

■リンパ腫の犬における低コバラミン血症の有病率と予後とのかかわり
Prevalence and prognostic impact of hypocobalaminemia in dogs with lymphoma.
J Am Vet Med Assoc. December 2009;235(12):1437-41.
Audrey K Cook, Zachary M Wright, Jan S Suchodolski, M Raquel Brown, Jorg M Steiner

目的:多中心型リンパ腫の犬における低コバラミン血症の有病率を判定し、血清コバラミン濃度と疾患の転帰の関連性を調査すること

構成:コホート研究

動物:多中心型リンパ腫の犬58頭

方法:多中心型リンパ腫の犬58頭の血清コバラミン濃度を測定した。低コバラミン血症の犬の臨床症状、ステージ、免疫表現型を、血清コバラミン濃度が基準値下限以上の犬のそれらと比較した。同様に周期的他剤併用化学療法プロトコールを実施した犬(n=53)の生存期間も比較した。60日前に死亡あるいは安楽死された治療犬の血清コバラミン濃度は、60日目に生存している犬のそれらと比較した。

結果:血清コバラミン濃度の範囲は<150-1813ng/lで、濃度の中央値は401ng/lだった。58頭中9頭(16%)が低コバラミン血症だった(血清コバ� ��ミン濃度<252ng/l)。低コバラミン血症の犬9頭中3頭は、少なくとも60日間生存し、比較として低コバラミン血症ではない(血清コバラミン濃度252ng/l以上)犬44頭中40頭(91%)は60日間生存した。周期的他剤併用化学療法プロトコールを実施した10頭の犬(10/53[19%])は60日までに死亡し、それらの犬の血清コバラミン濃度中央値(232ng/l)は、研究終了時まで生存した犬の濃度(556ng/l)よりも有意に低かった。

結論と臨床関連:この多中心型リンパ腫の犬の集団で低コバラミン血症は比較的少なかったが、予後不良に関係した。血清コバラミン濃度は多中心型リンパ腫の犬の予後に関する情報を提供するものかもしれない。(Sato訳)

■大豆由来イソフラボンが犬のリンパ球系細胞の成長を抑制する。
Soy-derived isoflavones inhibit the growth of canine lymphoid cell lines.
Clin Cancer Res. 2009 Feb 15;15(4):1269-76.
Jamadar-Shroff V, Papich MG, Suter SE.

目的:この研究は2つの犬のB細胞性リンパ球に対して、純粋なゲニステインと市販で利用可能なポリサッカライド含有ゲニステイン(GCP)と呼ばれるゲニステインの両方で、試験管内でのゲニステインの効果を評価し、正常犬に与えたときのGCPの経口生物学的利用率を決定することだった。

実験設計:ゲニステインとGCPの試験管内での効果は、細胞増殖分析とアポトーシス分析を使って評価した。両方の物質のIC50は、3-(4,5-ジメチル-2-チアゾリル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド (MTT)細胞増殖分析とヨウ化プロピジウム染色を使って決定した。アポトーシスはアネキシンV 染色、カスパーゼ3染色とカスパーゼ9染色そしてDNA ladderingを使って評価した。細胞周期解析とBcl-2/Bax比も検査した。段階的に増加させる薬物動態学的研究の初期投与量は、健常犬においてGCPの経口投与量でゲニステインが治療的血清濃度に達するかどうかを決定するために使用された。

結果:GL-1そして17-71細胞に対するゲニステインとGCPの72時間後の試験管内IC50はそれぞれ10 microg/mLと20 microg/mLだった。GCPは両方の細胞系をアポトーシスによって細胞死へと導き、処置した細胞は増加したBax:Bcl-2比を抑制した。増加させたGCP経口投与量を与えた健常犬におけるゲニステインの血清濃度は、用量段階的増大研究において72時間に試験管内IC50に達しなかった。

結論:これらの研究結果は、化学予防的にGCPの有用性を検討するため、犬のhigh-grade B-細胞性リンパ腫が人の非ホジキンリンパ腫の大きな動物モデルと関連があることを意味するかもしれないという概念そして/あるいは犬のhigh-grade B-細胞性リンパ腫が人の臨床的なリンパ腫試験への先導として役立つかもしれない治療戦略を支持します。(Dr.Kawano訳)

■猫の結節外リンパ腫:110頭の猫の化学療法に対する反応と生存性
Feline extranodal lymphoma: response to chemotherapy and survival in 110 cats.
J Small Anim Pract. November 2009;50(11):584-92.
S S Taylor, M R Goodfellow, W J Browne, B Walding , S Murphy, S Tzannes, M Gerou-Ferriani, A Schwartz, J M Dobson

目的:イギリスの猫結節外リンパ腫の治療に対する反応、生存性、予後因子を決定する

方法:7箇所の紹介センターで結節外のリンパ腫を診断した猫の記録を再調査し、徴候、腫瘍部位、以前の治療と化学療法プロトコールの情報を記録した。治療に対する反応と生存性に影響する因子を評価した。

結果:149症例が含有基準に合致した。69頭は鼻部リンパ腫、35頭は腎臓、15頭は中枢神経系、11頭は喉頭、19頭は種々の部位だった。66頭の猫はシクロフォスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロンの投与を受け、25頭はウィスコンシン-マジソン加ドキソルビシン他剤併用プロトコール、10頭はプレドニゾロン単独、9頭は他の組み合わせだった。治療した110頭の猫の反応率は85.5%だった。シクロフォスファミド、ビンクリスチ� �、プレドニゾロンで治療した猫の72.7%は完全寛解に達し、生存期間中央値は239日だった。ウィスコンシン-マジソンプロトコールで治療した猫の64%は完全寛解に達し、生存期間中央値は563日だった。完全寛解に到った鼻部リンパ腫の猫は生存期間が最も長く(749日)、中枢神経系リンパ腫の猫は最も短かった(70日)。完全寛解が達成された場合、治療開始前のコルチコステロイド投与が有意に生存期間を短くした。

臨床意義:結節外リンパ腫の猫は化学療法に反応し、他の部位に匹敵する生存期間を達成する。治療前のコルチコステロイド投与は、完全緩解を達成した猫の生存期間を短縮した。(Sato訳)


どのように政府は十代のうつ病の解決に役立ちます
■低グレード消化管型リンパ腫:17症例における臨床病理所見および治療に対する反応
Low-grade alimentary lymphoma: clinicopathological findings and response to treatment in 17 cases.
J Feline Med Surg. August 2009;11(8):692-700.
Amy E Lingard, Katherine Briscoe, Julia A Beatty, Antony S Moore, Ann M Crowley, Mark Krockenberger, Richard K Churcher, Paul J Canfield , Vanessa R Barrs

試験開腹中に採取した17頭の猫の胃腸管の複数部位の全層バイオプシーの組織および免疫組織化学的評価から、低グレード消化管型リンパ腫(LGAL)と診断した。
よく見られた臨床症状は、体重減少(n=17)、嘔吐および/または下痢(n=15)だった。11頭の臨床症状は慢性的だった。12頭の腹部触診は異常で、瀰漫性の腸管肥厚(n=8)、腸間膜リンパ節腫脹による異常なマス(n=5)、局所壁在腸管マス(n=1)などが認められた。よく見られた超音波所見は、正常あるいは層構造を保持したまま腸管壁厚の増加だった。腸間膜リンパ節の超音波ガイド下針吸引生検(n=9)は、バイオプシーの組織学的診断がリンパ腫の8頭の猫で良性リンパ過形成と誤診した。
16/17頭の猫において胃腸管の1つ以上の解剖学的部位に腫瘍浸潤があった。空腸(15/15頭)、回腸(13/ 14頭)、続いて十二指腸(10/12頭)が好発部位だった。12頭の猫は経口プレドニゾロンおよび高用量クロラムブシルパルス療法で治療し、2頭はマジソン-ウィスコンシン多剤プロトコール変法、3頭は両方のプロトコールを組み合わせて治療した。17頭中13頭(76%)は臨床的完全寛解に達し、寛解期間中央値は18.9ヶ月だった。完全寛解に達した猫(19.3ヶ月)は、完全寛解に達しなかった猫(n=4)(4.1ヶ月;P=0.019)よりも有意に生存期間中央値が長かった。経口プレドニゾロンと高用量クロラムブシルパルス療法の併用で治療したLGALの猫の予後は良好から優良である。(Sato訳)

■連続低線量率半身照射と化学療法による犬多中心性リンパ腫の治療
Sequential low-dose rate half-body irradiation and chemotherapy for the treatment of canine multicentric lymphoma.
J Vet Intern Med. 2009 Sep-Oct;23(5):1064-70.
D M Lurie, I K Gordon, A P Theon, C O Rodriguez, S E Suter, M S Kent

背景:連続半身照射(HBI)と化学療法の組み合わせが犬のリンパ腫の治療で可能であるが、照射感覚の延長は有効性に影響を及ぼすかもしれない。6Gy線量レベルで低線量率照射(LDRI)プロトコールを行う多くの犬は、2週間の照射間隔が可能である。

仮説:シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン(CHOP)ベースの化学療法プロトコールへのLDRIの組み込みは、犬のリンパ腫の治療に効果的である。

動物:多中心性リンパ腫と診断された28頭の飼育犬

方法:連続HBIと化学療法で犬リンパ腫を治療し、その効果と予後因子を評価する遡及研究。

結果:初回寛解の中央値は410日(95%信頼区間[CI]241-803日)だった。1-、2-、3年初回寛解率は54、42、31%だった。総生存期間中央値は684日( 95%CI 334-1223日)だった。1-、2-、3年生存率は66、47、44%だった。

結論と臨床関連:この研究の結果は、リンパ腫の犬の治療で2週間間隔の放射線照射と照射間化学療法の併用による治療強化が有効である事を示唆する。(Sato訳)

■形態および免疫学的に確認された犬白血病の臨床病理および疫学的評価
Clinical pathological and epidemiological assessment of morphologically and immunologically confirmed canine leukaemia
Vet Comp Oncol. September 2009;7(3):181-195. 57 Refs
F. Adam, E. Villiers, S. Watson, K. Coyne, L. Blackwood

従来、犬の白血病の分類は形態学的検査および細胞化学染色パターンに依存しているが、異常な細胞形態および染料取り込みは正確な分類を切り詰め、この分類をもとにした背景データは信頼できないだろう。
現在、免疫表現型決定は白血病分類のゴールドスタンダードである。この前向き研究の目的は、形態学および免疫学的に白血病と確認された犬の集団の臨床病理および疫学的特徴を評価し、カテゴリー(急性および慢性リンパ性白血病(ALL、CLL)、急性および慢性骨髄性白血病(AML、CML))内でそれらを比較することだった。形態学的および免疫学的に64症例の白血病を確認した:25症例はALL、17症例はCLL、22症例はAML。ALLおよびCLL症例におけるBおよびT免疫表現型の有病率に有意差はなかった。来院時、AML症例はALL症例� ��りも有意に年齢が若かった(P=0.04)。
その研究集団の中では、コントロール集団と比較してゴールデンレトリバーが多く見られた(6/25ALL症例、8/64白血病症例)。性差は見られなかった。ALLの犬は、CLLの犬よりも重度好中球減少(P = 0.001)および血小板減少(P = 0.002)を示し、有意により血球減少を示した。ALLとAMLで見られた細胞減少の重症度と数に有意差は見られなかった。白血病症例の21頭は1種の血球減少を示し、15頭は2種の血球減少、21頭は汎血球減少を示した。貧血は別に見られた一般的な血球減少だった(17/21)。貧血および/あるいは血小板減少がない好中球減少の犬はいなかった。グループ間の総白血球数に違いはなかった。末梢血の異型細胞数はAMLよりALLで有意に多く見られた;両方独立し、総白血球数の比率として(P = 0.03)。この研究は、急性白血病が慢性白血病よりもより顕著な血球減少を起こし、より多くの細胞形に影響するという仮説を強化するものである。(Sato訳)

■犬の再発性リンパ腫に対する単剤治療としてのダカルバジン
Dacarbazine as Single-Agent Therapy for Relapsed Lymphoma in Dogs.
J Vet Intern Med. 2009 Aug 26.
Griessmayr PC, Payne SE, Winter JE, Barber LG, Shofer FS.

背景:多中心型リンパ腫の犬において、治療がうまくいかないケースの原因は多剤耐性が最も一般的である。5-(3,3-ジメチル-1-トリアゼノ)-イミダゾール-4-カルボキシアミド(DTIC)は人のホジキンリンパ腫の標準的な治療として使われている非定型的なアルキル化剤であり、犬の抵抗性リンパ腫の多剤治療においても効果的である。しかし、犬の再発性リンパ腫の治療で、単剤療法としてのDTICの使用に対して入手できるデータはない。

仮説:単剤療法としてのDTICは、再発症例やこれまでに行った化学療法に反応しない症例に効果的且つ安全である。

動物:飼い主が所有している40頭の再発性リンパ腫の犬

方法:組織学的あるいは細胞学的にリンパ腫と確定診断し、再発した犬を遡及研究した。犬にDTIC (2-3週毎に4-5時間の持続点滴により800-1000 mg/m(2))を投与し、反応率と反応期間を評価した。血液学的異常と胃腸管毒性を評価した。

結果:DTICで治療した犬の全反応率は35%(14頭の犬)で、無進行期間中央値は43日だった。13頭の犬は部分寛解で、1頭の犬は完全寛解だった。3頭は病勢安定となった。軽度の胃腸管毒性が3頭の犬の治療後に報告された。治療後7-14日で観察された主な毒性は血小板減少症であった。血小板減少症のため治療が遅れた。

結論:DTICを単独で使うと再発性リンパ腫の治療において効果的である。(Dr.Kawano訳)

■犬リンパ腫患者のプロテオーム識別とプロファイリング
Proteomic identification and profiling of canine lymphoma patients
Vet Comp Oncol. June 2009;7(2):92-105. 24 Refs
L. Ratcliffe, S. Mian, K. Slater, H. King, M. Napolitano, D. Aucoin, A. Mobasheri

この研究は、犬リンパ腫患者における血清生物マーカーを確認するために、プロテオームおよび生物情報科学的アプローチを利用した。非リンパ腫(n=92)およびリンパ腫(n=87)の患犬から採取した冷蔵血清サンプルをファーストオピニオンの獣医診療所から輸送し、イオン交換クロマトグラフィーに供し、表面エンハンス型レーザー脱イオン化質量分析法により分析した。19の血清蛋白のピークが、それらの正常化したイオン強度をもとに2群間に有意差(P<0.05)があるとして確認された。2つの生物マーカーがリンパ腫および非リンパ腫患犬の鑑別能力があると確認された。そのテストデータの分析の陽性適中率(PPV)は82%だった。臨床的追跡調査研究はリンパ腫が疑われた96頭の患犬で実施された。このデータの評価で特異値は91 %、感受性は75%、PPVは80%、陰性適中率は88%だった。結論として、2つの血清生物マーカーの発現パターンは、血清サンプルでリンパ腫あるいは非リンパ腫カテゴリーにクラス分けすることが可能である。(Sato訳)

■犬の再発性リンパ腫における持続的L-アスパラギナーゼ、ロムスチンそしてプレドニゾンの多剤併用化学療法
Combination Chemotherapy with Continuous l-Asparaginase, Lomustine, and Prednisone for Relapsed Canine Lymphoma.
J Vet Intern Med. 2009 Aug 11.
Saba CF, Hafeman SD, Vail DM, Thamm DH.

背景:ロムスチン、L-アスパラギナーゼそしてプレドニゾン(LAP)のコンビネーションは犬のリンパ腫(LSA)における効果的なレスキュー療法である。これまでの研究において、我々はL-アスパラギナーゼを中止すると典型的に寛解が得られなくなると報告した。

仮説:ロムスチンと共にL-アスパラギナーゼを使うと犬のリンパ腫に対してよく通用し、レスキュー療法として効果的である。

動物:シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンそしてプレドニゾンを基本とした化学療法プロトコールで治療し、その後再発した細胞学的に多中心型リンパ腫と診断されている48頭の飼い主所有の犬。

方法:合計5回の投与あるいは病気が進行するまで、L-アスパラギナーゼの皮下あるいは筋肉注射と同時に3週間毎にロムス チンを経口投与した。プレドニゾンはプロトコールの期間中漸減して投与した。

結果:このプロトコールで治療した犬の奏功率(ORR)は77%で、完全寛解(CR)は65%だった。進行するまでの中央時間(TTP)は70日だった。ゆるい比較に基づくと、これらの所見は我々が以前に報告した所見と有意差はなかった。実際に投与したロムスチン投与量は反応率あるいは寛解期間に影響を与えなかった。

結論/臨床重要性:これらの所見は、LAPプロトコールはリンパ腫の犬における実行可能なレスキュー療法オプションであることを結論付ける過去のデータを支持する。しかし、この研究結果はロムスチン治療と一緒に連続的にL-アスパラギナーゼを使用することは寛解期間を明らかに延長させず、より毒性が強いように思われると示唆される� ��(Dr.Kawano訳)

■リンパ腫の犬において貧血は生存期間短縮に関連する
Anemia is associated with decreased survival time in dogs with lymphoma.
J Vet Intern Med. 2009 Jan-Feb;23(1):116-22.
A G Miller, P S Morley, S Rao, A C Avery, S E Lana, C S Olver

背景:腫瘍を持つ人の患者で貧血は一般的な合併症で、生存期間短縮およびクオリティオブライフの低下に関連している。

仮説:リンパ腫の犬における診断時の貧血の存在は、生存および寛解期間に負に関連するが、骨肉腫の犬ではそうではない。

動物:コロラド州立大学動物がんセンターに治療に来院したリンパ腫の犬84頭と骨肉腫の犬91頭

方法:遡及症例-コントロール研究。初回診察時の貧血の有無(PCV<40)を判定するため医療記録を再調査した。生存および寛解期間の中央値はKaplan-Meier product limit methodで判定し、貧血と生存性の関連はmultivariable Cox proportional hazard regression analysisで判定した。

結果:コントロール犬あるいは骨肉腫の犬よりも、癌関連貧血はリンパ腫の犬でより頻度が高かった。リンパ腫および貧血の犬は、貧血のない犬と比べ、生存期間が有意に短縮した。リンパ腫の犬の寛解期間に対する貧血の影響はなかった。骨肉腫の貧血した犬は、貧血していない骨肉腫の犬と比べ、生存あるいは寛解期間を短縮していなかった。

結論と臨床関連:初回診察時のリンパ腫と貧血の犬における生存期間の短縮は、重要な予後の意義を持つ。犬における癌関連貧血の理解は、それら患者におけるクオリティオブライフおよび生存期間を改善する新しい機会を提供するかもしれない。(Sato訳)

■低グレードリンパ球性リンパ腫の猫の予後:41症例(1995-2005)
Outcome of cats with low-grade lymphocytic lymphoma: 41 cases (1995-2005).
J Am Vet Med Assoc. 2008 Feb 1;232(3):405-10.
Kiselow MA, Rassnick KM, McDonough SP, Goldstein RE, Simpson KW, Weinkle TK, Erb HN.

目的:種々の器官を侵した低グレードリンパ球性リンパ腫の猫の治療に対する反応、寛解期間そして生存期間に関連した要因を評価すること。

計画:回顧的症例シリーズ

サンプル母集団:組織学的に低グレードリンパ球性リンパ腫と確定診断した41頭の猫

方法:組織学的に様々な器官系の低グレードリンパ球性リンパ腫と診断し、1995年から2005年の間にプレドニゾンとクロラムブシルで治療した猫の診療記録と生検材料を再調査した。寛解期間と生存期間を測定するためにカプラン・マイヤー法を使った。予後と関連する可能性のある要因を比較した。

結果:一般的な臨床症状は体重減少(83%)、嘔吐(73%)、食欲不振(66%)そして下痢(58%)だった。検査した78%の猫は血清コバラミン濃度が低かった。リンパ腫は猫の68%で� �腸管に限局した。56%の猫が治療によって完全寛解に達し、39%が部分寛解に達した。5%の猫は反応しなかった。いかなる危険因子(解剖学的位置など)と治療に対する反応の間に関連が見られなかった。部分寛解は完全寛解と比べてより短い寛解期間だった。;中央寛解期間は完全寛解に達した猫の897日に比べ、部分寛解に達した猫で428日だった。他に寛解期間と関連する要因はなかった。全生存期間中央値は704日だった。生存期間と関連する有意な要因はなかった。

結論と臨床関連:リンパ球性リンパ腫のほとんどの猫はプレドニゾンとクロラムブシルによる治療に反応し、評価したすべての因子は予後とは関連がなかった。(Dr.Kawano訳)

■犬の抵抗性リンパ腫の治療におけるメクロレタミン、プロカルバジンおよびプレドニゾン
Mechlorethamine, procarbazine and prednisone for the treatment of resistant lymphoma in dogs
Vet Comp Oncol. March 2009;7(1):38-44. 14 Refs
N. C. Northrup, T. L. Gieger, C. E. Kosarek, C. F. Saba, B. E. LeRoy, T. M. Wall, K. R. Hume, M. O. Childress, D. A. Keys

抵抗性リンパ腫の犬41頭を修正MOPP(メクロレタミン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾン)プロトコール(MPP[メクロレタミン、プロカルバジン、プレドニゾン]21日サイクルで投与、28日MOPPサイクルをから短縮)で治療した。MPPの総反応率は34%で、中央値は56日(95%信頼区間30-238)だった。17%の犬は完全寛解で持続期間中央値は238日、17%は部分寛解で中央値56日、32%は安定状態で中央値24日だった。細胞診における組織学的グレードあるいは細胞形態は反応に関係した。MPPプロトコールで最小限の毒性は見られ、更なる投与量増強あるいは他の化学療法剤の追加が可能と示唆される。(Sato訳)

■犬の皮膚上皮親和性T-細胞リンパ腫:概説
Canine cutaneous epitheliotropic T-cell lymphoma: a review
Vet Comp Oncol. March 2009;7(1):1-14. 67 Refs
J. Fontaine, C. Bovens, S. Bettenay, R. S. Mueller

犬の皮膚上皮親和性T-細胞リンパ腫は、病因の不明なまれな腫瘍性の状況である。皮膚炎の特徴は、皮膚および付属器構造に特定の向性を持つ腫瘍性Tリンパ球の浸潤を持つ。異なる臨床および組織形態(菌状息肉腫、パジェット様細網症、セザリー症候群)を概説する。犬のこの疾患はヒトの症候群に似ているが、犬症例の80%で腫瘍細胞がCD4-/CD8+なのに対し、ヒト患者の90%がCD4+/CD8-である。予後は悪く、生存期間は数ヶ月から2年である。治療は効果が低いことが多い。ロムスチンを使用した新しいプロトコールはこの疾患の予後不良を改善するかもしれない。(Sato訳)

■犬における膀胱の原発性悪性リンパ腫:放射線および化学療法の治療後長期寛解
Primary malignant lymphoma of the urinary bladder in a dog: longterm remission following treatment with radiation and chemotherapy
Schweiz Arch Tierheilkd. November 2008;150(11):565-9.
M Kessler, B Kandel-Tschiederer , S Pfleghaar, M Tassani-Prell

排他的に膀胱に限られる原発性(結節外)悪性リンパ腫は、ヒトや動物で非常に珍しい疾患であり、全身性(多中心性)リンパ腫が膀胱に広がっている悪性リンパ腫症例とは区別されるべきである。肉眼的に血尿と排尿困難を呈し、他の部位は関与しない膀胱のみの原発性B-cellハイグレードリンパ腫と診断された3歳避妊済みメスの雑種犬の症例を報告する。小分割体外照射療法と細胞障害性化学療法を組み合わせた治療後、腫瘍の急速な完全寛解をもたらせた。現在その犬は生存し、52ヶ月間寛解している。(Sato訳)

■リンパ腫の犬における抗酸化状態と酸化ストレスの生物マーカー
Antioxidant status and biomarkers of oxidative stress in dogs with lymphoma.
J Vet Intern Med. 2009 Mar-Apr;23(2):311-6. Epub 2009 Feb 4.
Winter JL, Barber LG, Freeman L, Griessmayr PC, Milbury PE, Blumberg JB.

背景:酸化ストレスは、獣医領域における癌患者の罹患率と死亡率に強い影響を与えるのと同じように発癌に影響を与えるかもしれない。この研究の目的は健常犬と比較して、治療前に新たにリンパ腫と診断した犬や寛解時の犬において、抗酸化物質濃度と酸化ストレスの生物マーカーを評価することだった。

仮説:リンパ腫の犬は、健常なコントロールの犬と比較して酸化体が増加し、抗酸化物質濃度が減少しており、これらの異常は寛解に達した時に正常化される。

動物:リンパ腫に罹患した17頭の犬と10頭の健常コントロール

方法:前向き、観察研究。健常コントロールの犬と比較し、リンパ腫と新たに診断して治療する前の犬において酸化ストレス[マロンジアルデヒドと総イソプロスタン(isoP) ]と抗酸化物質[α-トコフェロール、γ-トコフェロール、活性酵素吸収能力(ORAC)、グルタチオン・ペルオキシダーゼ(GSHPx)]を測定した。全ての犬が寛解に達した時、化学療法プロトコールの7週におけるリンパ腫の犬において同じパラメーターを測定した。

結果:基線において、リンパ腫の犬は健常コントロールの犬と比較して、α-トコフェロール(P <.001)とγ-トコフェロール(P= .003)が有意に低かったが、グルタチオン・ペルオキシダーゼ(GSHPx) (P=0.05)と活性酵素吸収能力(ORAC) (P=0.001)そしてイソプロスタン(isoP) (P < .001)がより高い値を示した。リンパ腫の犬において、治療後のα-トコフェロール濃度はより高く(P=0.005)、アスコルビン酸はより低かった(P=0.04)。

結論と臨床重要性:リンパ腫の犬では、酸化物質濃度と抗酸化物質濃度は変化しており、これらの生物マーカーのいくつかの状態は寛解後に正常化することが結果から示唆される。犬のリンパ腫治療においてそれらを補正する抗酸化治療介入が有益かどうかを判断するためのさらなる研究が期待される。(Dr.Kawano訳)

■リンパ腫の犬における低線量率放射線半身照射と化学療法の毒性研究
A toxicity study of low-dose rate half-body irradiation and chemotherapy in dogs with lymphoma
Vet Comp Oncol. December 2008;6(4):257-267. 33 Refs
D. M. Lurie, M. S. Kent , M. M. Fry, A. P. Theon

まだ治療をしていない多中心型リンパ腫の犬13頭で、低線量率放射線全身照射(TBI)と化学療法の効果を調査する前向き研究を行った。2週にわけ半身に6あるいは8Gyの照射を行った。毒性は軽度から中程度の血液および胃腸(GI)症状だった。1頭は治療の合併症で死亡した。食欲不振は照射量に関係なく見られた。血液毒性は一般的に見られ、8Gy照射後はより重度だった。胃腸毒性は下半身の8Gy照射後に起きやすかった。白毛症以外に放射線照射の晩発作用は認められなかった。
結果は血液および非血液毒性は照射量に依存したことを示した。しかし6Gyを照射した全ての犬は、そのプロトコールをよく許容し、照射間隔2週間で治療強化は可能であった。それらの犬の予備的生存データは、非常に励みになるもので、犬のリンパ腫に� ��ける低線量率放射線照射(LDRI)の効果を分析する強い理論的根拠を提供する。(Sato訳)

■血清アミロイドAは犬における多中心型リンパ腫の再燃のマーカーではない
Serum amyloid A is not a marker for relapse of multicentric lymphoma in dogs
Vet Clin Pathol. March 2008;37(1):79-85.
Alexandre Merlo, Barbara Cristina Gagliano Rezende, Maria Luisa Franchini, Paula Rumy Goncalves Monteiro, Silvia Regina Ricci Lucas

背景:血清アミロイドA(SAA)は動物やヒトにおける炎症、感染、腫瘍の状態で濃度が上昇する急性期蛋白である。犬の多中心型リンパ腫は一般的な癌で、化学療法により長期生存が可能と示されている。しかし、頻繁な再燃で化学療法プロトコールの変更を余儀なくさせる。

目的:この研究の目的は、犬の多中心型リンパ腫の再燃に対するマーカーとして血清アミロイドAを評価することと、化学療法による治療中の血清アミロイドA濃度に変化が起きるかどうかを判定することだった。

方法:ELISAにより健康なコントロール犬(n=20)、化学療法を投与している健康犬(n=8)、リンパ腫の犬(n=20)の血清アミロイドAを測定した。化学療法を投与している全ての犬を無作為に2治療群に振り分け、シクロフォスファマイド、ビンクリスチ� �、プレドニゾン(CVP)とビンクリスチン、シクロフォスファマイド、メトトレキサート、L-アスパラギナーゼ(VCMA)プロトコールを行う群とした。血清アミロイドA濃度測定は、リンパ腫の犬および化学療法を受けている健康犬で1-4週目の化学療法前、その後は健康犬で4ヶ月間3週間毎、リンパ腫の犬で再燃時および再燃前のサンプルで行った。健康なコントロール犬は1回のみ血清アミロイドAを測定した。結果は頻回測定ANOVAで分析し、その後治療の週および群を比較するのにTukey多重比較法を使用した。

結果:平均血清アミロイドA濃度は健康犬、化学療法コントロール犬と比較し、化学療法前のリンパ腫の犬で有意に高かった。再燃時、血清アミロイドAの増加は見られなかった。化学療法プロトコールの種類で血清アミロイドA濃度� �違いは見られなかった。

結論:血清アミロイドAは多中心型リンパ腫の犬の再燃のマーカーではなく、また行った化学療法もその濃度に影響しない。(Sato訳)

■血清チミジンキナーゼ1活性による犬の悪性リンパ腫と白血病のモニタリング治療-新しく完全自動化された非放射計分析の評価
Monitoring therapy in canine malignant lymphoma and leukemia with serum thymidine kinase 1 activity - evaluation of a new, fully automated non-radiometric assay.
Int J Oncol. 2009 Feb;34(2):505-10.
Von Euler HP, Rivera P, Aronsson AC, Bengtsson C, Hansson LO, Eriksson SK.

DNA前駆体の合成に影響するチミジンキナーゼ1(TK)はS-G2細胞周期にのみ発現する。血清TK濃度は腫瘍疾患の増殖性の活性に関連する。今までのTK濃度の測定は、ラジオ酵素分析(REA)および実験的なELISA方法に依存しており、バイオマーカーとしての臨床的使用には制限があったが、悪性リンパ腫(ML)に罹患した犬による最近の研究で、その広い可能性が実証された。特異的抗3'-アジド一燐酸デオキシチミジン(AZTMP)抗体を用いた競合免疫測定法に基づいた非放射測定法は、完全自動Liaisonチミジンキナーゼ測定器(DiaSorin社)へさらに進化している。
健康な犬(n=30)、白血病(LEUK)(n=35)、悪性リンパ腫(n=84)、非血液学的腫瘍(n=50)そして炎症性疾患(n=14)の犬からの血清を両方の方法で検査した。リンパ腫と白血病サンプルは抗癌剤使用前と使用中 のものを利用できた。この研究でのLiaisonチミジンキナーゼ測定の変動係数はそれぞれ6.3%と3.4%(low/high TK)で、チミジンキナーゼのラジオ酵素分析(REA)(X軸)とLiaisonチミジンキナーゼ測定(Y軸)の関連はy=0.9203x + 1.3854 (R(2)=0.9501)だった。化学療法中に測定したチミジンキナーゼ1濃度は、完全寛解した犬と寛解していなかった犬の間に非常に明確な違いがあった。Tukey-Kramer法ですべての白血病と寛解できていない悪性リンパ腫は他のグループと有意に異なったことを示した。
Liaisonチミジンキナーゼ測定に高い精度、高い感受性とチミジンキナーゼのラジオ酵素分析(REA)に対する優れた相関性が認められた。Liaisonチミジンキナーゼ測定は犬の白血病と悪性リンパ腫の治療と管理における有用な臨床情報を提供し、人における試験でさらに検証する可能性をもつ。(Dr.Kawano訳)

■骨髄関与を伴う犬リンパ腫のVCAAベースプロトコールにシトシンアラビノシドを追加した治療:違いはあるのか?
Cytosine arabinoside in addition to VCAA-based protocols for the treatment of canine lymphoma with bone marrow involvement: does it make the difference?
Vet Comp Oncol. June 2008;6(2):80-89. 36 Refs
L. Marconato, U. Bonfanti, D. Stefanello, M. R. Lorenzo, G. Romanelli, S. Comazzi, E. Zini

シトシンアラビノシド(ara-C)は、ヒトの急性白血病および非ホジキンリンパ腫の治療で多くのプロトコールに組み込まれるものである。この研究の目的は、骨髄関与を伴う犬リンパ腫の集団におけるmyeloablative regimenでara-Cの効果を前向き評価した。17頭の犬を研究した。8頭はVCAAベースプロトコールで治療し(1群)、9頭はその方法にara-Cを加えて治療した(2群)。ara-Cはスケジュール5日目に、1日に150mg/m2のIV持続点滴を5日連続で行った。
治療中に1群の2頭および2群の8頭が完全寛解(CR)に達した。CR率は2群の方が有意に高かった(P<0.01)。生存期間中央値は、1群で72.5日(範囲6-174日)、2群で243日(範囲73-635日)だった。生存期間は有意に2群が長かった(P<0.001)。両プロトコールに犬は良く耐え、副作用の発生率も低かった。VCAAベースプロトコールにara-Cを加えることは、ステージVリンパ腫の犬に安全で効果があると思われる。ヌクレオシド類似体の取り込みは、今後の犬の治療戦略の発展に非常に重要かもしれない。(Sato訳)

■アクチノマイシンDを用いた再発あるいは抵抗性リンパ腫の犬におけるレスキュー療法の評価:49症例
Actinomycin D as rescue therapy in dogs with relapsed or resistant lymphoma: 49 cases (1999-2006).
Bannink EO, Sauerbrey ML, Mullins MN, Hauptman JG, Obradovich JE.
J Am Vet Med Assoc. 2008 Aug 1;233(3):446-51

目的:再発あるいは抵抗性を示す犬のリンパ腫に対して、アクチノマイシD用いて治療を行ったときの反応率と犬の無腫瘍期間を評価し、血液学的毒性と治療反応に関連した予後因子を特定すること。

統計:回顧的症例検討。

動物:再発あるいは抵抗性リンパ腫の犬49頭。

方法:医療記録から、シグナルメント、臨床徴候、身体検査所見、診断結果、サブステージ、以前までの化学療法、これまでにプレドニゾロンを併用していたか、アクチノマイシンDの投与用量、投与回数、反応、無腫瘍期間、そして治療後に行われたCBCの結果について評価した。

結果:アクチノマイシンDが3週間毎に5回、もしくは腫瘍が進行するまで1回平均投与量が0.68 mg/m2(範囲は0.42〜0.72 mg/m2)で静脈投与された。26症例(53%)でプレドニゾロンが同時に投与された。20症例(41%)で完全寛解がみられ、中央無腫瘍期間は129日であった。血小板減少症が最も多くみられた血液学的毒性であった(n=22[45%])。プレドニゾロンの投与を行っていた症例、初回寛解期間が短い症例、そして以前の化学療法の使用薬剤数が多い症例では、アクチノマイシンDの治療に反応する可能性がより低いということと有意に関連していた。プレドニゾロンの投与を行っていた症例と以前の化学療法の使用薬剤が多い症例では無腫瘍期間が短いことと有意に関連していた。

結論と臨床関連:単剤としてのアクチノマイシンD投与は、多くの例で軽度の血小板減少症がみられたが、犬の再発および抵抗性リンパ腫のレスキュー化学療法として効 果的であり、治療に良く耐えることができた。(Dr.UGA訳)

■鼻部および鼻咽頭リンパ腫の猫:50症例(1989-2005)
Nasal and nasopharyngeal lymphoma in cats: 50 cases (1989-2005)
Vet Pathol. November 2007;44(6):885-92.
L Little, R Patel, M Goldschmidt

猫の鼻腔腫瘍でリンパ腫は最も一般的であるが、この腫瘍の解剖学的、免疫組織学的、細胞学的特徴を特に扱った報告はほとんどない。50頭の猫を検死時にバイオプシーあるいは細胞診単独でリンパ腫と診断した。10頭の猫に複数臓器関与を認め、それらのうち2頭はそれぞれ小脳および前頭皮質に限局していた。腫瘍は、50頭中41頭(82%)は鼻部リンパ腫、5頭(10%)は鼻咽頭リンパ腫に分類され、4頭(8%)はその両方の組織が関与していた。組織学的に全て瀰漫性リンパ球様腫瘍と考えられ、濾胞リンパ腫の特徴を示した猫はいなかった。
病理学者によるスライド審査を得られた44例中40例(91%)は免疫芽細胞リンパ腫、2例(5%)は瀰漫性大細胞、1例は瀰漫性混合と分類され、1例は分類できなかった。免疫組織化学染色を行った45頭中32頭はCD7 9aに均一に陽性、7頭はCD3に均一に陽性、6頭はCD79aとCD3細胞の混合だった。上皮向性は評価に十分な上皮の提示があった5頭中4頭(80%)で見られた。それら4頭中3頭はB細胞、1頭は顆粒T細胞リンパ腫だった。21頭で鼻部細胞診を行い、15頭はリンパ腫と細胞学的に診断された。残りの5頭の診断は、炎症(n=4)、正常なリンパ組織(n=1)、あるいは診断されなかった(n=1)。一般的な生化学の異常は、26/46(57%)の猫で汎高蛋白血症、11/46(24%)の猫で低コレステロール血症だった。(Sato訳)

■犬上皮向性皮膚型リンパ腫に対するロムスチン(CCNU)の反応:46症例の回顧的研究(1999年〜2004年)
Response of canine cutaneous epitheliotropic lymphoma to lomustine (CCNU): a retrospective study of 46 cases (1999-2004).
J Vet Intern Med. 2006;20(6):1389-97.
Risbon RE, de Lorimier LP, Skorupski K, Burgess KE, Bergman PJ, Carreras J, Hahn K, Leblanc A, Turek M, Impellizeri J, Fred R 3rd, Wojcieszyn JW, Drobatz K, Clifford CA.

背景:上皮向性リンパ腫(ELSA)は犬において珍しい皮膚の悪性T細胞性リンパ腫である。スタンダードな治療法に関してコンセンサスは得られておらず、犬の多中心型リンパ腫に対して伝統的に用いられている化学療法剤によりELSAの治療評価が行なわれている。


不安やおむつの恋人

仮説:この多施設の回顧的研究の目的は、ELSAの治療における1-(2-chloroethyl)-3-cyclohexyl-l-nitrosourea (CCNU)の効果を評価することである。

動物:十分な追跡調査をし、治療反応の情報がある46例の犬。

方法:全ての症例で、組織病理学的に診断された。免疫組織化学(CD3, CD79a)は46例中42例のサンプルで行われた。

結果:全身の鱗屑を含む皮膚病変(25/46)、プラークまたは小結節(22/46)、粘膜皮膚病変(14/ 46)、角膜への浸潤(1/46)がみられた。リンパ節浸潤は7例で、セザリー症候群は2例で証明された。CCNU療法の回数の中央値は4回(範囲は1〜11回)、初期用量中央値は60 mg/m2(範囲は30〜95)であった。46例中、15例はCR、23例はPR、5例はSD、3例はPDであり、全体的な反応率は83%であった。反応がみられる治療回数の中央値は1回(範囲は1〜6回)であった。全体的な中央反応期間は94日(範囲は22〜282回)であった。好中球減少症(10/46)、血小板減少症(1/46)、貧血(1/46)、肝酵素の上昇(3/46)、詳細不明の理由(1/46)のため、16例が用量を減らす必要があった。

結論と臨床的重要性:高い反応率でよく耐えるプロトコルであり、ELSAの治療におけるCCNU単独又は多剤併用プロトコルの有用性を調査するために前向き研究が必要である。(Dr.HAGI訳)

■犬の再燃性あるいは難治性リンパ腫に対するL-アスパラギナーゼ、ロムスチンそしてプレドニゾンによるコンビネーション化学療法
Combination chemotherapy with L-asparaginase, lomustine, and prednisone for relapsed or refractory canine lymphoma.
J Vet Intern Med. 2007 Jan-Feb;21(1):127-32.
Saba CF, Thamm DH, Vail DM.

背景:犬のリンパ腫(LSA)は初期治療に反応するが、初期のプロトコールの薬剤に対して抵抗性を示すようになる。新しいレスキュープロトコールが必要である。

仮説: L-アスパラギナーゼ、ロムスチンそしてプレドニゾンのコンビネーションはよく耐えることが出来、犬のLSAのレスキュー療法として効果的である。

動物:難治性あるいはCHOP (シクロフォスファミド/ドキソルビシン/ビンクリスチン/プレドニゾン)に基づいた化学療法プロトコール後に再燃した多中心型LSAと細胞学的に確定診断した飼い主が所有する31頭の犬

方法:前向き臨床試験。ロムスチン(標的投与量. 70 mg/m2)を3週間間隔で合計5回あるいは病気が進行するまで経口的に投与した。はじめの2回のロムスチン治療と同時にL-アスパラギナーゼ(400 U/kg)を皮下注射した。プレドニゾンはプロトコールの期間中漸減して投与した。

結果:このプロトコールで治療した犬のすべての反応率は87%(27/31)で、完全寛解に達した犬が52%(16/31)だった。反応に対する中央期間は21日だった。腫瘍の進展に対する中央期間は63日(完全寛解に達した犬で111日、部分寛解に達した犬で42日)だった。
このレスキュープロトコールを始める前にL-アスパラギナーゼを受けた犬とそうでない犬の間には、反応率と進展する時間に明らかな違いはなかった。副作用は軽度で、31症例中29症例で自然治癒した。

結論と臨床関連:これはよく耐えられる犬の再燃性LSAのレスキュー療法である。反応率と寛解期間は他の有効なレスキュープロトコールと匹敵した。従ってこのプロトコールは実行可能なレスキ� ��ーオプションである。(Dr.Kawano訳)

■二次性白血病をともなった猫の大顆粒リンパ球(LGL)リンパ腫:CD3/CD8 alphaalpha優位の腸原発型
Feline large granular lymphocyte (LGL) lymphoma with secondary leukemia: primary intestinal origin with predominance of a CD3/CD8(alpha)(alpha) phenotype.
Vet Pathol. 2006 Jan;43(1):15-28.
Roccabianca P, Vernau W, Caniatti M, Moore PF.

21例の猫の大顆粒リンパ球リンパ腫の臨床病理学的、免疫表現的特徴について検査を行った。全ての猫は在来種で、19例は短毛種、2例は長毛腫で、診断時の平均年齢は9.3歳であった。末梢血のLGLの数の増加は18/21の猫でみられた。好中球増加(12/21)と血清肝酵素の上昇(7/12)、総ビリルビンおよび直接ビリルビンの上昇(7/13)、BUNの上昇(5/14)、クレアチニンの上昇(2/14)がみられた。猫はたいてい病気が進行した状態で連れて来られ、診断後84日以上生存した症例はいなかった(平均18.8日)。LGLの細胞は形態学的に成熟した細胞(6/21)、未成熟な細胞(13/21)、両者の混合(2/21)がみられた。
剖検により、空腸、回腸、そして、頻度は低いものの十二指腸にも腫瘍の浸潤を認めた。小腸病変としては、潰瘍(9/13)、腫瘍細胞の上皮向性(9/13)が一般的で� �った。剖検により、腸間膜リンパ節(13/13)、肝臓(12/13)、脾臓(8/13)、腎臓(5/7)、骨髄(5/7)に腫瘍浸潤がみられた。19/21の症例でT細胞型(CD3epsilon +)がLGLの腫瘍細胞を特徴とした。CD8alphaalpha+の細胞障害性/抑制遺伝子型は12/19のT細胞腫瘍でみられ、2例はCD4+CD8alphaalpha型、3例はCD4-CD8-型、2例はCD4+helper T 細胞であった。CD8beta鎖発現はどの例でもみられなかった。2例ではB細胞起源かT細胞起源かが確証できなかった。CD103は19例中11%(58%)で発現した。猫における腫瘍性大顆粒リンパ球とネコ腸上皮内リンパ球(IELs)によって共有されたこの免疫表現的特徴から猫のLGLリンパ腫が小腸のIEL起源ということを立証する。(Dr.HAGI訳)

■長期間多剤併用プロトコールと短期間単剤プロトコールを用いた犬のリンパ腫の治療における効果の比較
Efficacy of a continuous, multiagent chemotherapeutic protocol versus a short-term single-agent protocol in dogs with lymphoma.
J Am Vet Med Assoc. 2008 Mar 15;232(6):879-85.

目的:犬リンパ腫に対して、ドキソルビシンを基盤とした長期間にわたる多剤併用療法と、短期間だけドキソルビシンを用いた単剤のプロトコールによる反応率と寛解率、そして生存期間の比較をすること。

統計:無作為抽出臨床試験。

動物:114頭のリンパ腫の犬。

方法:犬はL-アスパラキナーゼ、ビンクリスチン、サイクロフォスファマイド、ドキソルビシン、メトトレキサート、そしてプレドニゾロンで治療したもの(n=87)、もしくはドキソルビシン単剤で治療したもの(n=27)であった。

結果:多剤併用のプロトコールを用いて治療した86例中(1例で反応不明)63例の犬(73%)と単剤のプロトコールを用いて治療した27頭中14頭(52%)において完全寛解が得られた。サブステージ

結論と臨床関連:今回の犬の母集団では、長期間で多剤併用の化学療法と、短期間ドキソルビシン単剤のプロトコールによる反応率と生存期間に有意差は確認できなかった。(Dr.UGA訳)

■犬の薬剤耐性リンパ腫の治療のためのCCNUとDTIC化学療法の組み合わせ
Combination of CCNU and DTIC Chemotherapy for Treatment of Resistant Lymphoma in Dogs.
J Vet Intern Med. 2008; 22(1) 164-171.
A.B. Flory, K.M. Rassnick, R. Al-Sarraf, D.B. Bailey, C.E. Balkman, M.A. Kiselow, K. Autio

背景:P糖タンパク耐性はリンパ腫の犬で再燃をおこさせる一般的な原因である。CCNUとDTICは各々P糖タンパクによって影響されないアルキル化剤で、各々交叉耐性がない。この併用プロトコールにより総投与量の増加と相乗効果の改善をもたらすであろう。

仮説:CCNUとDTICの組み合わせは薬剤耐性リンパ腫又は以前投与された化学療法に反応しなくなったリンパ腫の犬の治療に用いることができる。

動物:基本的な化学療法(l-CHOP; L-アスパラギナーゼ, サイクロフォスファミド,ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)に耐性があるリンパ腫の犬57例

方法:第1相、第2相の前向き研究が行われた。DTICを静脈内投与する5時間前にCCNUを速やかに経口投与した。共通の制吐薬と予防薬の抗生剤が用いられた。治療は4週間毎に行われた。

結果:8例の第1相試験の結果を基に、CCNU40mg/m2の経口投与とDTIC600mg/m2静脈内投与が、薬剤耐性リンパ腫57例の治療に用いられた。13例(23%)はCRになり、中央寛解期83日間、7例(12%)はPRで中央寛解期間25日間であった。l-CHOPにおけるCRの中央寛解期間において、CCNU-DTICに反応がない犬は、CCNU-DTICで寛解した犬よりも有意に長かった(225日(l-CHOP)対92日(CCNU-DTIC)(P=0.02))。主な副作用は好中球減少で、治療後7日目の好中球の数の中央値は1,275cells/ μLで、ALT活性の上昇はもしかすると肝毒性に関連しているかもしれず、7例で検出された。

結論と臨床学的重要性:CCNUとDTICの組み合わせは薬剤耐性リンパ腫の犬のレスキューとして効果的な治療になり得る。(Dr.HAGI訳)

■猫リンパ腫の治療におけるVELCAP-Cの効果と副作用

Efficacy and Toxicosis of VELCAP-C Treatment of Lymphoma in Cats.
Hadden AG, Cotter SM, Rand W, Moore AS, Davis RM, Morrissey P.
J Vet Intern Med. 2008 Jan-Feb;22(1):153-7.

背景:リンパ腫は猫において最も一般的にみられる悪性腫瘍である。犬のリンパ腫では、ビンクリスチン、L−アスパラキナーゼ、サイクロフォスファマイド、ドキソルビシン、そしてプレドニゾン(VELCAP-S)によるプロトコールは効果的であり、よく耐えることができている。今回のプロトコール(VELCAP-C)の24週における使用法は猫の治療の為に考案された。

仮説:VELCAP-Cのプロトコールがリンパ腫の猫の治療において、より少ない化学療法のプロトコールで治療を行ったときと同様の生存期間を得られる。

動物:61頭のリンパ腫の猫。

方法:回顧的検討。VELCAP-Cに対する反応、副作用、そして生存期間を評価した。シグナルメント、臨床ステージ、CBC,そして生化学における影響および投与量について調� �を行った。

結果:プロトコールを完全に終了した6頭の猫(10%)の中央生存期間は1189日であった。全体のうち43%(
61頭中23頭)の猫で完全寛解が得られ、中央生存期間は62日であった。導入時に投与量の減量が必要であった猫は、完全寛解を得られる傾向が認められた。診断時における体重減少、肝腫大は治療への反応が悪いという負の関連性がみられた。初回治療時における血清LDHの増加は生存期間と反比例していた。

結論と臨床重要性:今回の多剤併用プロトコールでは、より少ない薬剤で行う治療のデータを超える程の生存期間の延長が得られなかった。血清LDHの値はリンパ腫の猫において有益な予後因子であるかもしれない。(Dr.UGA訳)

■リンパ腫の犬におけるレスキュー化学療法としてテモゾロマイドまたはダカルバジンとアントラサイクリン系の併用の効果
Efficacy of temozolomide or dacarbazine in combination with an anthracycline for rescue chemotherapy in dogs with lymphoma
J Am Vet Med Assoc. August 2007;231(4):563-9.
Nikolaos G Dervisis, Pedro A Dominguez, Luminita Sarbu, Rebecca G Newman, Casey D Cadile, Christine N Swanson, Barbara E Kitchell

目的:再発または難治性リンパ腫の犬におけるアントラサイクリン系抗がん剤との組み合わせで、テモゾロマイドまたはダカルバジンの治療結果を比較する

構成:非無作為コントロール臨床試験

動物:再発性、または難治性リンパ腫の犬63頭

方法:21日サイクルで化学療法を行った。テモゾロマイドとアントラサイクリン系(ドキソルビシンまたはダクチノマイシン)の組み合わせを21頭に投与し、ダカルバジンとアントラサイクリン系を42頭の犬に投与した。効果と毒性を評価した。

結果:テモゾロマイド-アンテラサイクリン系併用で治療した18頭中13頭(72%)とダカルバジン-アンテラサイクリン系併用で治療した35頭中25頭(71%)は、完全または部分寛解した。レスキュー化学療法に対する反応の持続中央値は、テモゾ� ��マイド群で40日(範囲、0-217日)、ダカルバジン群で50日(範囲、0-587日)だった。テモゾロマイド群よりもダカルバジン群の犬のほうが高グレードの血液毒性の発生が有意に高かったが、消化管毒性の発生は両群に有意差が見られなかった。完全または部分反応、レスキュー化学療法に対する反応の持続期間、レスキュー後の生存期間、または総生存期間の犬の割合に関して群間の有意差はなかった。

結論と臨床関連:2つの組み合わせは、再発または難治性リンパ腫の犬の治療に有望であるが、ダカルバジンの投与よりもテモゾロマイドのほうが使いやすく、血液毒性も少ない。(Sato訳)

■低グレードのリンパ球性リンパ腫の猫の転帰:41症例
Outcome of cats with low-grade lymphocytic lymphoma: 41 cases (1995-2005).
J Am Vet Med Assoc. 2008 Feb 1;232(3):405-10.
Kiselow MA, Rassnick KM, McDonough SP, Goldstein RE, Simpson KW,
Weinkle TK, Erb HN.

目的:様々な臓器に発生した低グレードのリンパ腫の猫の治療反応、寛解期間、
生存期間に関連する因子を評価すること。

様式:回顧的症例検討。

動物:低グレードのリンパ球性リンパ腫と組織学的に確定された41例の猫。

方法:1995年〜2005年に低グレードのリンパ球性リンパ腫と組織学的に確定(様々な臓器に発生)し、プレドニゾンとクロラムブシルで治療した猫のカルテと生検標本の再調査を行った。寛解期間と生存期間を評価するためにカプランマイヤー法を使用した。因子については可能な限り予後について比較を行った。

結果:一般的な臨床徴候として、体重減少(83%)、嘔吐(73%)、食欲不振(66%)、下痢(58%)が認められた。78%においては血清コバラミン濃度が低値を示した。リンパ腫の68%は消化管型であ� ��た。56%で完全寛解、39%で部分寛解が得られた。5%では反応が認められなかった。解剖学的部位を含めどの危険因子も治療反応と関連がみられなかった。部分寛解は完全寛解と比べ寛解期間がより短く、中央寛解期間は部分寛解の猫で428日、完全寛解の猫で897日であった。寛解期間は他のどの因子においても関連性はなかった。全体的な中央生存期間は704日であった。生存期間と有意に関連のある因子はなかった。

結論と臨床関連:リンパ球性リンパ腫のほとんどの猫はプレドニゾンとクロラムブシルに反応し、ほとんどの因子は転帰と関連が認められなかった。(Dr.HAGI訳)

■犬の抵抗性リンパ腫の治療におけるCCNUとDTICの併用について
Combination of CCNU and DTIC Chemotherapy for Treatment of Resistant Lymphoma in Dogs.
J Vet Intern Med. 2008 Jan-Feb;22(1):164-71
Flory AB, Rassnick KM, Al-Sarraf R, Bailey DB, Balkman CE, Kiselow MA, Autio K.

背景:P糖蛋白による薬剤耐性は犬のリンパ腫再燃の一般的な原因である。CCNUとDTICはP糖蛋白に影響されないアルキル化剤であり、それぞれの交差耐性を欠く。これらを併用することで総投与量の増加と相乗効果という点において有益である。

仮説:CCNUとDTICの併用に耐えることができるとともに、抵抗性に進行したものや以前までの化学療法に反応しなくなった犬のリンパ腫の治療において治療することができる。

動物:標準的な化学療法(l-CHOP;L-アスパラキナーゼ、サイクロホスファマイド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン)の治療に抵抗性を示した57頭のリンパ腫の犬。

方法:予側I相試験とII相試験が行われた。DTICを静脈投与する5時間前にCCNUが経口投与された。制吐剤と予防的抗生剤が同時に使用された。治療は4週間毎に行われた。

結果:I相試験で行われた8頭の犬の結果から、CCNU 40mg/m2 POとDTIC 600 mg/m2 IVの組み合わせで57頭の難治性リンパ腫の犬を治療した。13頭(23%)の犬で完全寛解が得られ、寛解期間中央値が83日であり、7頭(12%)で部分寛解が得られ、寛解期間中央値25日であった。CCNU-DTICに反応しなかった犬のl-CHOPの完全寛解期間中央値は、CCNU-DTICによって寛解が得られた犬のものより有意に長かった(225日対92日,P=.02)。主な副作用は好中球減少であり、治療後7日目の平均好中球数は1,275/muLであった。ALTの増加もみられ、肝毒性との関連の可能性も7頭でみられた。

結論と臨床重要性:CCNUとDTICの併用は犬の難治性リンパ腫におけるレスキュー薬の効果的な選択肢の一つであることが示された。(Dr.UGA訳)

■犬のリンパ腫の化学療法への反応と生存期間における独立した予後因子としての貧血の評価:96症例(1993〜2006)
Assessment of anemia as an independent predictor of response to chemotherapy and survival in dogs with lymphoma: 96 cases (1993-2006)
J Am Vet Med Assoc. December 2007;231(12):1836-42.
Andrew H Abbo, Michael D Lucroy

目的:貧血(Hct 37%以下)がリンパ腫の診断時に認められるか否かによって、化学療法を行っている犬の治療反応や生存期間における負の予後要因になるかを決定すること。

統計:回顧的症例検討。

動物:化学療法を行っていた96頭のリンパ腫の犬。

方法:シグナルメント、初回の血液検査データ、化学療法のプロトコール、臨床反応、そして死亡日が回顧的にリンパ腫の犬の医療記録から収集した。単変量、多変量、そして生存解析が初回の化学療法の反応と生存期間に対して貧血がもたらす影響を調べるために行われた。

結果:全体を通して、貧血でない犬(n = 56)は、貧血した犬(n =
40)に比べ化学療法を行った際の完全寛解率が4倍であった。貧血した犬の中央生存期間(139日)は、貧血でない犬の中央生存期間(315日)に比べると有意に短いものであった。犬の多中心型リンパ腫(臨床ステージと化学療法のプロトコールの一致が見られた)に関する部分分析において、貧血のある犬(n
= 24)の中央生存期間(101日)は貧血がみられない犬(24; 284日)と比較すると有意に短かった。他の変数は生存期間と関連しなかった。

結論と臨床関連:今回の調査より、化学療法を行っているリンパ腫の犬において貧血は負の予後因子の一つであることが示された。リンパ腫の犬の貧血の改善による臨床結果に与える影響については更なる調査が必要になるであろう。

■犬の消化器型リンパ腫30例(1997-2004)の臨床結果

Clinical outcomes of 30 cases (1997-2004) of canine gastrointestinal lymphoma
J Am Anim Hosp Assoc. 2007 Nov-Dec;43(6):313-21.
Joseph David Frank, S Brent Reimer, Philip H Kass, Matti Kiupel

30例の犬の消化器型リンパ腫について検討した。発生部位は、胃、小腸、大腸に孤立性もしくは2ヵ所以上の部位に認められた。治療法として、切除のみ(4例)、切除と化学療法(8例)、化学療法単独(15例)もしくは支持療法のみ(3例)であった。4例は死亡、24例は安楽死を行い、2例は現在も生存している。全体の生存期間中央値は13日であった。生存している2例は大腸に発生したものであった。犬の消化器型リンパ腫は重症疾患とされるものの一つであり予後は不良である。しかし、結腸直腸に発生するものはより長期の生存が可能かもしれない。(Tako訳)

■<犬の多中心型リンパ腫のCoapとUW19プロトコールの比較>
Comparison of Coap and UW-19 Protocols for Dogs with Multicentric Lymphoma
J Vet Intern Med. 2007 Sep-Oct;21(6): 1355 1363
Kenji Hosoya, William C. Kisseberth, Linda K. Lord, Francisco J.
Alvarez, Ana Lara-Garcia, Carrie E. Kosarek, Cheryl A. London, and C.
Guillermo Couto

背景:犬のリンパ腫の治療に対して様々な化学療法のプロトコールが報告されている。しかしながら、異なる研究からのプロトコールの比較、特に、生存期間と毒性を評価することは難しい。

仮説:リンパ腫の犬においてCOAP (C, サイクロフォスファミド; O, ビンクリスチン; A, シトシンアラビノシド; P,プレドニゾン)と修正されたウィスコンシン大学19週(UW19)導入プロトコールのどちらを選択しても特に生存期間に影響はない。

動物:101頭の多中心型リンパ腫の犬

方法:回顧的研究(2001〜2006)。8週COP(C, サイクロフォスファミド; O, ビンクリスチン; P,プレドニゾン)で導入しCOAPで維持を行ったもの(COAP群)もしくは19週CHOP ((C, サイクロフォスファミド; H,ドキソルビシン; O, ビンクリスチン; P,プレドニゾン)を基本としたプロトコル(UW19群)を実施し、初回寛解期間、生存期間、毒性、費用に関して比較を行った。

結果:COAP群は71例、UW19群は30例で実施した。再燃後には様々なプロトコールが用いられた。COAPとUW19群の最初の中央寛解期間はそれぞれ94日(範囲:6〜356日)と174日(範囲:28〜438日)であった(P<0.01)。犬の中央生存期間はCOAP群とUW19群でそれぞれ309日(6〜620日)、275日(70〜1102+)であった(P=0.09)。交絡因子(WHO臨床ステージ、年齢、性別、再導入でのドキソルビシンの使用)を補正すると、COAP群の犬は死亡の危険率がUW19群(P=0.03)と比較して1.9倍(95%信頼区間1.1〜3.4)であった。好中球減少症と胃腸障害毒性の重症度はCOAP群よりUW19群において有意に高かった。

結論と臨床的重要性:長期間ドキソルビシンを含 む連続併用化学療法プロトコールはドキソルビシンを含まないプロトコールの一例と比べたところ再燃の危険性が少ないとともにと化学療法に関連した死亡の危険性が低かった。(Dr.HAGI訳)

■多中心性リンパ腫の犬の第一選択療法としてのロムスチンとプレドニゾン:17症例
Lomustine and prednisone as a first-line treatment for dogs with multicentric lymphoma: 17 cases (2004-2005).
J Am Vet Med Assoc. 2007 Jun 15;230(12):1866-9.
Sauerbrey ML, Mullins MN, Bannink EO, Van Dorp TE, Kaneene JB, Obradovich JE.

目的:多中心性リンパ腫の犬の第一選択療法としてのロムスチンとプレドニゾン併用投与に関連した反応率、中央反応期間、副作用そして予後因子を評価する。

設計:回顧的症例集積検討

動物:17頭の犬

手順:医療記録を評価した。シグナルメント、身体検査所見、診断検査結果、ステージとサブステージ、初期ロムスチンそしてプレドニゾン投与量、ロムスチン投与量の総量に関する情報を得た。

結果:5回投与、あるいは病気の進行が観察されるまで、ロムスチンを中央開始用量67 mg/m(2)で21日間隔の経口投与を行った。プレドニゾンは中央開始用量1.8 mg/kg/日 (0.82 mg/lb/日)、経口投与し、治療の初めの1ヶ月間から徐々に漸減した。6頭の犬は完全寛解し、3頭は部分寛解した。平均そして中央反応期間はそれぞれ48.8と39.5日であった。中央生存時間は111.2日だった。多重解析において、雌とより高用量のロムスチン投与量は、より長い無病期間と有意に関連した。好中球減少症は用量制限因子で、4頭の犬がロムスチン投与後1週間で、臨床的に重要な好中球減少症を呈した。

結論と臨床関連:ロムスチンとプレドニゾンの同時投与は多中心型リンパ腫の犬がよく耐えることができるが、罹患した犬の第一選択治療として、このコンビネーションの使用を支持しているわけではなかったということを結果が示している。(Dr.Kawano訳)

■犬リンパ肉腫に対するウィスコンシン大学2年プロトコールの再評価
Reevaluation of the University of Wisconsin 2-year protocol for treating canine lymphosarcoma
J Am Anim Hosp Assoc. 2007 Mar-Apr;43(2):85-92.
Claire Inderbinen Kaiser1, Janean L Fidel, Malgorzata Roos, Barbara Kaser-Hotz

この遡及研究で、新規に悪性リンパ肉腫と診断され、ウィスコンシン-マジソン(UW-M)化学療法プロトコールで通常治療した96頭の犬の集団を調査した。治療前の特徴は、予後因子判定に分析した。世界保健機関(WHO)ステージ(ステージIVを含む)のより高い犬、高カルシウム血症の犬は有意に再燃のリスクが高かった(それぞれP=0.018、P=0.016)。用量の減少、治療遅延、コルチコステロイドの前処置は臨床結果に関係しなかった。最初の寛解期間270日は、過去に報告されたデータと同様だった。全体の生存期間218日は、過去のデータよりもかなり短かった。(Sato訳)

■リンパ腫または骨肉腫の犬における化学療法中の予防的トリメトプリム-サルファジアジン:二重盲目プラセボ対照試験
Prophylactic trimethoprim-sulfadiazine during chemotherapy in dogs with lymphoma and osteosarcoma: a double-blind, placebo-controlled study
J Vet Intern Med. 2007 Jan-Feb;21(1):141-8.
J D Chretin, K M Rassnick, N A Shaw, K A Hahn, G K Ogilvie, O Kristal, N C Northrup, A S Moore

背景:化学療法の投与は病的状態発生リスクに関与する。獣医腫瘍学で化学療法関連病的状態の管理は第一に支持されている。

仮説:この研究の目的は、リンパ腫または骨肉腫の犬の化学療法関連病的状態に対し予防的抗菌剤使用の影響を評価することだった。

動物:研究資格は、骨肉腫またはリンパ腫と組織学的に確認された犬とした。

方法:最初にドキソルビシン化学療法投与後14日間、プラセボまたはトリメトプリム-サルファジアジンを投与する群に無作為に振り分けた。オーナーと臨床医は治療に関し盲目とした。7日目と14日目にCBC、身体検査とパフォーマンス、中毒グレードを評価した。調査した結果は入院、感染の疑い、胃腸毒性、好中球減少、非血液学的毒性、クオリティオブライフだった。

結果� ��骨肉腫34頭とリンパ腫39頭の73頭を研究した。トリメトプリム-サルファジアジンを投与した犬(n=36)は、入院率(P=.03)、非血液学的毒性(P=0.039)、グレード2-4の非血液学的毒性(P<.0001)、グレード2-4の胃腸毒性(P=.007)、変化したパフォーマンス(P=.015)を有意に低下させた。群で、抗菌剤を投与した骨肉腫の犬(n=34)は、非血液学的毒性の発生はほとんどなく(P=.02)と重度非血液学的毒性は少なかった(P=.038)。リンパ腫の犬(n=39)は入院(P=.035)、非血液学的毒性の程度(P=.036)、パフォーマンスの変化(P=.015)の発生は有意に低下した。

結論:骨肉腫またはリンパ腫の犬で、予防的トリメトプリム-サルファジアジンの使用は、最初のドキソルビシン投与から14日間、病的状態を減ずるのに有効である。(Sato訳)

■猫のIBDと 消化管リンパ腫の診断において内視鏡標本と全層生検標本の比較
Comparison of endoscopic and full-thickness biopsy specimens for diagnosis of inflammatory bowel disease and alimentary tract lymphoma in cats.
J Am Vet Med Assoc. 2006 Nov 1;229(9):1447-50.
J Am Vet Med Assoc. 2007 Feb 1;230(3):338; author reply 338.
Evans SE, Bonczynski JJ, Broussard JD, Han E, Baer KE.

目的: 猫の消化管リンパ肉腫の診断のために内視鏡生検(EB)標本の精度を評価すること。

デザイン: 前向き研究。

動物: 炎症性腸疾患(IBD)あるいは消化管リンパ肉腫の22頭の猫

手順: 開腹あるいは腹腔鏡下手術において全層生検(FTB)標本を得る直前に、胃と十二指腸の内視鏡検査において、内視鏡生検(EB)標本を得た。
組織病理診断の精度をEBとFTB標本の間で比較した。

結果: リンパ肉腫はFTB標本に基づいて10頭の猫で診断した。リンパ肉腫はすべての10頭の猫において空腸と回腸で検出され、9頭の猫で十二指腸、および4頭の猫で胃に検出された。同じ10頭の猫では、EB調査結果は3頭の猫においてリンパ肉腫と診断したが、3頭の猫では決定的ではなかった。胃のリンパ肉腫に罹患した猫4頭中3頭の胃のEB標本で正しく診断できたが、EB標本では小腸リンパ肉腫に罹患した4頭のIBDは正確に診断できなかった。

結論と臨床関連: EB標本は、胃のリンパ肉腫の診断の役に立つが、IBDと小腸のリンパ肉腫を区別するには、適切ではなかった。猫の消化管リンパ肉腫の最も一般的な部位が空腸と回腸であるので、正確な診断に得るためには、開腹か腹腔鏡検査でそれらの部位からのFTB標本を採取するべきです。腹腔鏡検査は、診断的な生検標本を得るために、内視鏡検査や開腹検査に比べて最少の侵略的な代替手段となるかもしれません。(Dr.Kawano訳)

■猫の骨髄におけるリンパ球増加の悪性、良性の鑑別
Differentiating Benign and Malignant Causes of Lymphocytosis in Feline Bone Marrow
J Vet Intern Med 19[6]:855-859 Nov-Dec'05 Retrospective Study 15 Refs
Douglas J. Weiss

血液または骨髄のリンパ球増加で、悪性および良性の原因の鑑別は不確定な可能性がある。この研究では、8年間かけて猫の骨髄検査結果報告から小リンパ球数増加を伴う猫を確認するため再調査した。再調査した203件のうち、12件(5.9%)が小リンパ球増加を示した。それら猫の診断は、慢性リンパ急性白血病(CLL;n=2)、赤芽球癆(PRCA;n=4)、免疫介在性溶血性貧血(IMHA;n=3)、胸腺腫(n=1)、胆管肝炎(n=1)、原因不明の発熱(n=1)だった。CLLから反応性リンパ球増加の鑑別に使用可能ないくつかの因子が確認された。
CLLの猫は老齢傾向にあり、リンパ球はわずかに大きく、核が裂け、または小葉に分かれていた。反応性リンパ球増加は、免疫介在性貧血、炎症性疾患に関与していた。反応性リンパ球増加で、増殖性リンパ球は、骨髄のリンパ様 凝集に組織化して、B細胞優性だった。代わってCLLと胸腺腫で、増殖リンパ球は散在性に分布し、T細胞優性だった。ゆえに、リンパ球増加の原因の鑑別は、徴候、併発疾患の状況、リンパ球形態、骨髄のリンパ球分布、免疫表現型を評価に含めるべきである。猫の年齢、重度貧血の存在、炎症性疾患の所見も考慮すべきである。(Sato訳)

■リンパ腫再燃の犬に対するデキサメサゾン、メルファラン、アクチノマイシンD、シトシンアラビノシド(DMAC)プロトコール
Dexamethasone, melphalan, actinomycin D, cytosine arabinoside (DMAC) protocol for dogs with relapsed lymphoma
J Vet Intern Med. 2006 Sep-Oct;20(5):1178-83.
Francisco J Alvarez, William C Kisseberth, Stacey L Gallant, C Guillermo Couto

背景:一般に、再燃リンパ腫の治療は、反応の確率はより低く、寛解期間はより短い。この研究の目的は、再燃リンパ腫の犬の緩解再導入を目的としたDMAC(デキサメサゾン、メルファラン、アクチノマイシンD、シトシンアラビノシド)多剤化学療法プロトコールの効果を評価することだった。

仮説:DMACは再燃リンパ腫の犬の効果的な再導入プロトコールだろう。

動物:54頭の犬


"青年期の不安障害"

結果:72%の犬が寛解(44%完全寛解[CR]、28%部分寛解[PR])に達し、11%は安定疾患(SD)、17%は進行疾患(PD)だった。寛解中央期間は61日(範囲2-467+日)だった。CR、PR、SDの寛解期間中央値はそれぞれ112、44、27日だった。反応率に影響する因子は、過去のドキソルビシンによる治療、過去のプロトコールで寛解に達する能力がないことだった。血小板減少症は56%の犬に発生し(3頭グレード1、6頭グレード2、7頭グレード3、7頭グレード4)、好中球減少症は17%の犬で起こった(1頭グレード2、2頭グレード3、4頭グレード4)。胃腸毒性は22%の犬で起こった(5頭グレード1、3頭グレード2、1頭グレード3)。

結論と臨床意義:再燃多中心型リンパ腫の犬に対し、DMACプロトコールは効果的� ��レスキュープロトコールである。血小板減少症は一般的な毒性症状であるが、一般にそのプロトコールにはよく許容した。(Sato訳)

■犬の多中心型リンパ腫の多剤併用化学療法プロトコールにおけるアスパラギナーゼの影響
J Am Anim Hosp Assoc. 2005 Jul-Aug;41(4):221-6.
Influence of asparaginase on a combination chemotherapy protocol for canine multicentric lymphoma.
Jeffreys AB, Knapp DW, Carlton WW, Thomas RM, Bonney PL, Degortari A, Lucroy MD.

多剤併用化学療法は犬のリンパ腫の治療において単剤化学療法より優れていますが、効果に対する夫々の薬剤の作用はよく理解されていない。改良したシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾンによる化学療法プロトコール(COP)で治療した34頭、および同じプロトコールの導入期にアスパラギナーゼを投与した42頭の犬を比較することによって、化学療法プロトコールに対するアスパラギナーゼの作用を決定した。両方のグループは2週間と6週間の臨床反応と無進行期間に基づいて比較した。アスパラギナーゼは犬の研究において、明らかに臨床寛解の可能性の増加あるいは最初の無進行期間を延長させないかもしれません。(Dr.Kawano訳)

■猫の悪性リンパ腫におけるシクロフォスファミド、ビンクリスチン、そしてプレドニゾロン(COP)を使った化学療法:古いプロトコールでの新しい結果
Chemotherapy with cyclophosphamide, vincristine, and prednisolone (COP) in cats with malignant lymphoma: new results with an old protocol.
J Vet Intern Med.2002 Mar-Apr;16(2):179-86.
Teske E, van Straten G, van Noort R, Rutteman GR.

悪性リンパ腫の61頭を使った回顧的研究で、ネコ白血病ウイルス(FeLV)の発生率が低い国であるオランダにおいて確立された化学療法プロトコール(シクロフォスファミド、ビンクリスチン、そしてプレドニゾロン[COP])の効果を調べた。 22頭の猫(36.1%)が前縦隔リンパ腫、11頭(18.0%)は消化管リンパ腫、そして、7頭(11.5%)が末梢性リンパ腫、8頭(13.1%)が鼻リンパ腫そして13頭(21.3%)が種々のリンパ腫(腎リンパ腫2頭(3.3%)を含む)でした。 テストされた54頭の猫のウイルス検査をしたところ4頭(7.4%)だけがFeLV陽性でした。完全寛解(CR)した61頭中46頭(75.4%)において約1そして2年無病気期間(DFPs)は夫々51.4%と37.8%で、寛解中央期間は251日でした。
すべての猫の1年生存率は48.7%で、2年生存率は39.9%で、中央生存期間は266日でした。 前縦隔リンパ腫の中央生存期間、1年生存率は夫々262日と49.4%であった。シャム猫は、他の品種より生存と寛解の予後は良好でした。この研究における治療への反応は、重要な予後の指標となることを示しました。長期生存には完全寛解が必要です。完全寛解に達しなかった猫は1年以上長く生存する可能性が低くなります。この研究における若いシャム猫は、若齢で前縦隔リンパ腫により罹患しやすい傾向があり、全ての猫がFeLV陰性でした。異なる化学療法併用プロトコールを使った他の研究で報告されている結果と比較して、悪性リンパ腫に罹患した猫にとって最も高い寛解率と最も長い生存率であった。(Dr.Kawano訳)

■膀胱のリンパ腫:3頭の犬、1頭の猫
LYMPHOMA AFFECTING THE URINARY BLADDER IN THREE DOGS AND A CAT
LIVIA BENIGNI1, CHRISTOPHER R. LAMB1, NURIA CORZO-MENENDEZ2, ANDREW HOLLOWAY3, JANE M. EASTWOOD1

膀胱がリンパ腫に侵されている3頭の犬と1頭の猫を報告し、腹部エックス線と超音波所見を述べる。膀胱を侵しているリンパ腫の壁在病変は全ての動物の超音波検査で確認できた。膀胱リンパ腫の一般的な合併症は、水腎症と水尿管だった。2頭の造影検査は腹膜、後腹膜腔への尿の漏洩を調査するのに必要だった。エックス線、超音波所見は、他の膀胱腫瘍で報告されるものと同じだった。ゆえに膀胱リンパ腫は、移行上皮癌のようにより一般的な膀胱腫瘍と鑑別不可能だった。犬猫の膀胱壁の肥厚や壁在massの鑑別診断にリンパ腫を含めることは重要である。(Sato訳)

■画像診断−若犬の前立腺リンパ腫による二次的尿閉
IMAGING DIAGNOSIS-URINARY OBSTRUCTION SECONDARY TO PROSTATIC LYMPHOMA IN A YOUNG DOG
MATTHEW D. WINTER1, JENNIFER E. LOCKE2, DOMINIQUE G. PENNINCK3

3歳オスのドーベルマンピンシャーの2週間にわたる有痛性排尿困難、排便困難、体重減少を、タフツ大学フォスター小動物病院で検査した。超音波検査により両側水腎症、右側水尿管、肝脾腫大、対称性軽度前立腺肥大、膀胱拡大を認めた。前立腺の針生検、バイオプシーによりリンパ腫と診断した。犬の前立腺肥大の原因でリンパ腫はほとんどない。超音波所見は非特異的で、針生検またはバイオプシーが確定診断に必要である。(Sato訳)

■B-細胞結膜リンパ腫の猫1例
B-cell conjunctival lymphoma in a cat
Veterinary Ophthalmology
Volume 7 Issue 6 Page 413 - November 2004
CASE REPORT
Zaher A. Radi, Debra L. Miller and Murray E. Hines II

抄録
13歳の家猫短毛種メス猫から両側結膜腫瘍を外科的に切除し、組織学的に検査した。腫瘍は浸潤性の非被包性で、高密度に充填した大きなシート列状の円形から多角形の細胞のからなるものだった。腫瘍細胞はさまざまな大きさで、少量から中程度の細胞質を有し、卵形から円形の核を持っていた。腫瘍細胞の免疫組織化学染色で、BLA.36抗体で陽性、CD-3抗体で陰性に染まった。組織病理、免疫組織化学所見をもとに、結膜B-細胞リンパ腫の診断を下した。これは猫の結膜リンパ腫の免疫組織化学特性を持つ最初の症例である。(Sato訳)

■高カルシウム血症の鑑別:犬46頭の遡及研究
[Differential diagnosis of hypercalcemia--a retrospective study of 46 dogs]
Schweiz Arch Tierheilkd. 1998;140(5):188-97.
Uehlinger P, Glaus T, Hauser B, Reusch C.

高カルシウム血症の46頭の犬の症例を回顧的に研究した。高カルシウム血症の最も一般的な原因は悪性疾患で、大多数はリンパ肉腫(LSA,n=23)に罹患していた。
興味の深いことに15頭しか触知可能なリンパ節腫脹がなかった。
他の腫瘍は肛門嚢のアポクリン腺癌(n = 4)、乳癌(n = 2)、未分化癌 (n = 1)、そして悪性組織球症(n = 1)であった。 高カルシウム血症における非腫瘍性の原因は副腎皮質機能低下症(n = 5)、急性腎不全(n = 2)、慢性腎不全(n = 2)、高ビタミンD血症(n = 1)、そして原発性上皮小体機能亢進症(n = 1)であった。4症例については確定診断に至らなかった。
中等度から著しい高リン酸血症と高窒素血症は原発性腎疾患のすべての犬において、そして副腎皮質機能低下症の犬5頭中4頭で見られた。
対照的に腫瘍の犬31頭中たった4頭が(軽度の)高リン酸血症と20頭が軽度から中等度の高窒素血症が見られた。上昇したPTH濃度は原発性慢性腎疾患と原発性上皮小体機能亢進症の犬で見られたが、腫瘍の犬で1頭しか見られなかった。低いPTH濃度は高ビタミンD血症の犬および腫瘍の8症例で見られた。さらに腫瘍の3症例は正常範囲内であった。

結論
1. 高カルシウム血症の最も一般的な原因はLSAである。触知できるリンパ節腫脹がなくてもLSAを除外せず、さらなる診断ステップが必要かもしれない。
2. 中等度から著しい高リン酸� ��症の併発は原発性腎疾患あるいは副腎皮質機能低下症を示唆する。
3. PTH濃度の上昇は原発性上皮小体機能亢進症に一致するが、他の高カルシウム血症の原因を除外できない。(Dr.Kawano訳)

■猫の骨髄においてリンパ球増多を引き起こす疾患の良性と悪性の鑑別
Differentiating benign and malignant causes of lymphocytosis in feline bone marrow.
J Vet Intern Med. 2005 Nov-Dec;19(6):855-9.

血液あるいは骨髄でリンパ球増多を引き起こす疾患の良性と悪性は問題となることがあります。今回の研究では、8年間、猫の骨髄検査結果から小リンパ球増加を伴う猫を再検討した。203症例の中で12症例(5.9%)は小リンパ球増加を示した。これらの猫の診断は慢性リンパ球性白血病(CLL:2症例)、赤芽球癆(PRCA:4症例)、免疫介在性溶血性貧血(IMHA:3症例)、胸腺腫(1症例)、胆管肝炎(1症例)、および不明熱(1症例)が含まれた。CLLと反応性リンパ球増多を区別するのに役立つかもしれないいくつかの要因が特定された。
CLLの猫は、より高齢である傾向があり、リンパ球はわずかに大きく分葉そして分裂した核を持っていた。反応性リンパ球増多は免疫介在性貧血と炎症性疾患に関連していた。反応性リンパ球増多では、増殖したリンパ� �は、骨髄においてリンパ性が集合して分布され、主にB細胞だった。一方、CLLと胸腺腫では、増殖したリンパ球は、び慢性に広がり、主にT細胞だった。従って、リンパ球増多の原因の鑑別はシグナルメント、同時発生の病気の状態、リンパ球の形態学、骨髄でのリンパ球の分布、および免疫形質の評価を含めるべきである。猫の年齢、重度の貧血そして炎症性疾患に関する証拠の存在も考慮すべきである。(Dr.Kawano訳)

■犬の心臓リンパ腫と心嚢水:12例(1994-2004)
Cardiac Lymphoma and Pericardial Effusion in Dogs: 12 Cases (1994-2004)
J Am Vet Med Assoc 227[9]:1449-1453 Nov 1'05 Retrospective Study 41 Refs
John M. MacGregor, DVM; Maria L. E. Faria, DVM, PhD; Antony S. Moore, MVSc, DACVIM; Anthony H. Tobias, BVSc, PhD, DACVIM; Donald J. Brown, VMD, PhD, DACVIM; Helio S. A. de Morais, DVM, PhD, DACVIM

目的:心臓リンパ腫による心嚢水が貯留した犬で、心嚢水分析結果を含む臨床特性と臨床病理所見、およびそれに関する転帰を判定する

構成:回顧的症例シリーズ

動物:12頭の犬

方法:罹患犬の医療記録から、心エコー検査所見、エックス線所見、心嚢水分析結果、臨床病理所見、治療プロトコール、予後を再検討した。

結果:全ての犬で心エコー検査により心嚢水が認められ、心嚢水の細胞診(11/12頭)、または心膜の組織検査(3/12)によりリンパ腫を認めた。大型犬種が多く見られ、体重の中央値は40.5kgだった。多くの血液学的、生化学変化は軽度で非特異的だった。多剤化学療法剤による治療を行った犬の生存期間は157日で、化学療法を行わなかった犬は22日だった。この差に有意性はないが、長期生存した犬も見ら� ��た。

結論と臨床関連:心嚢水の原因として心臓リンパ腫はまれで、結果から心臓リンパ腫は他のステージVサブステージbリンパ腫の予後不良を常に保証するわけではないと思われる。(Sato訳)

■リンパ腫の犬に対する標準的CHOPプロトコールにL-アスパラギナーゼを加えた時、効果と毒性に影響するか?
Does L-Asparaginase Influence Efficacy or Toxicity When Added to a Standard CHOP Protocol for Dogs with Lymphoma?
J Vet Intern Med 19[5]:732-736 Sep-Oct'05 Retrospective Study Refs
Valerie S. MacDonald, Douglas H. Thamm, Ilene D. Kurzman, Michelle M. Turek, and David M. Vail

過去にリンパ腫を治療したことがない犬に、L-アスパラギナーゼ(L-ASP)を追加した、または追加しなかった同じCHOPベースの化学療法を施し、寛解率、初回寛解期間(FRD)および毒性を評価した。リンパ腫の犬115頭にL-ASPを加えたCHOPベース化学療法を計画したが、製薬会社が無作為を希望したため、31頭には予定していたL-ASPを投与しなかった。
2つの治療群の犬の徴候、それまでの陰性予後因子の有無は統計的に同じだった。L-ASPを投与した、投与しなかった犬のFRD中央値に違いは見られなかった(206日vs.217日;P=.67)。また全体の生存期間中央値にも差は見られなかった(L-ASP投与:310日vs.非投与:308日;P=.84)。投与、非投与群間に総寛解率に関する統計差は見られなかった(89.3%vs.87.1%;P=.75)。また群間寛解率にも違いはなかった(投与:83.3 %、非投与:77.4%;P=.59)。毒性出現(好中球減少、下痢、嘔吐)と治療遅延(P=.80)も違いはなかった。
結果から、この多剤プロトコールにおいてL-ASPを省いても結果に重大な影響は及ぼさないと思われる。ゆえに導入が失敗しているリンパ腫の犬の再燃の治療にL-ASPを使用するため、使用を控えておくのが上策と思われる。(Sato訳)

■ウィスコンシン-マディソン大学の化学療法プロトコールで治療したリンパ腫の猫における反応率と生存時間:38症例(1996-2003)
Response rates and survival times for cats with lymphoma treated with the University of Wisconsin-Madison chemotherapy protocol: 38 cases (1996-2003).
J Am Vet Med Assoc. 2005 Oct 1;227(7):1118-22.
Milner RJ, Peyton J, Cooke K, Fox LE, Gallagher A, Gordon P, Hester J.

目的: ウィスコンシン-マディソン大学の化学療法プロトコールで治療したリンパ腫の猫における反応率と生存時間を決定すること

計画: 回顧的研究

動物: リンパ腫の猫38頭

手順: 診療記録を再検討し、年齢、性、品種、FeLVそしてFIV感染状態、解剖学的フォーム、臨床病期および生存時間の情報を得た。 免疫形質は判定しなかった。

結果:猫の年齢の平均±標準偏差 は10.9±4.4歳だった。総合的な中間生存時間は210日間(四分位範囲、90〜657日間)で総合的な初期寛解期間は156日間(四分位範囲、87〜316日間)だった。 年齢、性、解剖学的フォームおよび臨床病期は初期寛解期間あるいは生存時間との有意な関連性はなかった。
38頭中18頭(47%)の猫は完全寛解し、14頭(37%)が部分寛解し、6頭(16%)は反応がなかった。初期寛解期間は部分寛解の猫(114 日間)に比べ完全寛解の猫(654日間)で有意に長かった。完全寛解の猫の中央生存時間(654日間)は部分寛解の猫(122日間)そして反応がなかった猫(11日間)に比べ有意に長かった。

結論と臨床関連: リンパ腫の猫はウィスコンシン-マディソン大学の化学療法プロトコ−ルでの治療に高い確率で反応することが結果から示された。年齢、性、解剖学的フォーム、および臨床病期は初期反応の期間あるいは生存時間に有意な関連性はないが、初期の治療に対する反応は関連づけられた。(Dr.Kawano訳)

■猫の胃腸管リンパ腫
Gastrointestinal Lymphoma in Cats
Compend Contin Educ Pract Vet 27[10]:741-751 Oct'05 Review Article 30 Refs
Sandra Grover, DVM

リンパ腫は猫でよく診断される腫瘍で、現在胃腸管(GI)リンパ腫が一番よく見られる型である。GIリンパ腫の猫の多くはFeLV陰性で、年齢の中央値は9-13歳である。よく見られる臨床症状は食欲低下、嘔吐、下痢に続く体重減少である。腹部超音波検査は強力な診断ツールであるが、確定診断には組織サンプルが必要である。組織細胞型(小、大細胞型リンパ腫)は治療反応、生存期間を強く予測するものである。(Sato訳)

■結節外リンパ腫の猫における心内膜液滲出と心タンポナーデ
Pericardial effusion and cardiac tamponade in a cat with extranodal lymphoma.
J Small Anim Pract 45[9]:467-71 2004 Sep
Zoia A, Hughes D, Connolly DJ

5歳家ネコ長毛猫の段々悪化する呼吸困難を評価した。猫白血病ウイルス抗原の血清検査は陽性だった。胸部X線写真で胸水を認め、超音波検査で心内膜液滲出と心タンポナーデが明らかとなった。胸水と心内膜滲出液の細胞診で、播種性リンパ腫を示すリンパ芽球細胞を認めた。胸膜穿刺および心膜穿刺後、Wisconsin-Madison化学療法プロトコールでリンパ腫を治療した。3日後に猫は退院し、この時点(初回来院後6ヶ月)でまだ症状は出ていない。著者の知るところでは、心嚢液で腫瘍細胞の細胞学的確認を得た結節外リンパ腫が直接原因となるような猫の心内膜液滲出および心タンポナーデを確認する最初の報告である。(Sato訳)

■ウィスコンシン-マディソン大学の化学療法プロトコールで治療したリンパ腫の猫の反応率と生存時間:38症例 (1996--2003)
Response rates and survival times for cats with lymphoma treated with the University of Wisconsin-Madison chemotherapy protocol: 38 cases (1996-2003)
Journal of the American Veterinary Medical Association October 1, 2005 (Vol. 227, No. 7)
Rowan J. Milner, BVSc, MMedVet; Jamie Peyton, DVM; Kirsten Cooke, DVM, DACVIM; Leslie E. Fox, DVM, MS, DACVIM; Alexander Gallagher, DVM; Patti Gordon, DVM; Juli Hester

目的-ウィスコンシン-マディソン大学の化学療法プロトコールで治療したリンパ腫の猫の反応率と生存時間を判定する

計画-回顧的研究

動物-リンパ腫の猫38頭

方法-診療記録を再検討し、年齢、性、品種、FeLV、FIV感染状態、解剖学的フォーム、臨床ステージ、そして生存時間に関する情報を得た。免疫形質は実行しなかった。

結果-猫の年齢の平均±標準偏差は10.9±4.4歳だった。 総合的な中央生存時間は210日間(四分位範囲、90〜657日間)で、総合的な初期寛解は156日 (四分位範囲、87〜316日間)だった。 年齢、性、解剖学的フォームそして臨床ステージは初期寛解期間あるいは生存時間に有意に関連づけられなかった。38頭の猫のうち18頭(47%)は完全寛解となり、14頭(37%)には、部分寛解となり、6頭(16%)は反応がなかった。初期寛解期間は部分寛解(114 日)より完全寛解(654 日)の猫のほうが明らかに長かった。完全寛解の猫の中央生存時間(654 日)は部分寛解の猫(122 日)あるいは全く反応がなかった猫(11日)と比べて明らかに長かった。

結論と臨床関連-リンパ腫の猫は高い確率でウィスコンシン-マディソン大学の化学療法プロトコールによる治療に反応するだろうということが結果で示された。年齢、性、解剖学的フォーム、そして臨床ステージは初期反応あるいは生存時間の期間に明らかな関連性はなかったが、治療に対する初期反応には関連性があった。(Dr.Kawano訳)

■イギリスで初診診療獣医師による犬リンパ腫の治療
Treatment of canine lymphoma by veterinarians in first opinion practice in England.
J Small Anim Pract 43[5]:198-202 2002 May
Mellanby RJ, Herrtage ME, Dobson JM

初診診療で獣医師による犬リンパ腫治療方法を、イギリスの小動物動物病院1000件をランダムに選びアンケートにより調査した。382人の獣医師により完全な返答が得られた。回答者の95%は過去1年以内に犬リンパ腫を診断していた。回答者の87%は、彼らが診断したイヌリンパ腫症例の50%以上を治療していた。最もよく使用されていた治療プロトコールは、ビンクリスチン、シクロフォスファミド、プレドニゾロンの多剤組み合わせ(COP)だった。回答者の2%がドキソルビシンベースの治療プロトコールで、犬リンパ腫を最初に治療していた。この調査で、ドキソルビシンベースのプロトコールが生存期間を改善するいくつかの報告があるにもかかわらず、イギリスのほとんどの初診獣医師は犬のリンパ腫をCOPで治療すると示唆する。(Sato訳)

■犬のリンパ腫の臨床医による評価、リンパ節針吸引細胞診、フローサイトメトリーによる寛解状態の判定結果の比較
Comparison of Results of Clinicians' Assessments, Cytologic Examination of Fine-Needle Lymph Node Aspirates, and Flow Cytometry for Determination of Remission Status of Lymphoma in Dogs
J Am Vet Med Assoc 226[4]:562-566 Feb 15'05 Prospective Study 31 Refs
Laurel E. Williams, DVM, DACVIM; Maia Tcheng Broussard, DVM; Jeffrey L. Johnson, MS; Jennifer Neel, DVM, DACVP

目的:犬のリンパ腫の寛解を評価するときの臨床医間の一致性、寛解を判定するリンパ節触診、針吸引リンパ節の細胞診、フローサイトメトリーの結果の関連を判定する

構成:前向き研究

動物:治療していないリンパ腫の犬23頭

方法:2人の臨床医が個別にリンパ節を測定し、下顎、または膝窩リンパ節の細胞の細胞診、フローサイトメトリーを治療開始前1週間に実施した。臨床医の寛解評価と細胞診検査、そしてリンパ節測定を2、3、5週目に繰り返し、フローサイトメトリーは5週目に再度実施した。

結果:臨床医の寛解評価の間に有意な相関が確認された。5週目のリンパ節触診と細胞診検査の間に有意な相関が認められたが、2、3週目に認められなかった。フローサイトメトリーを使用することで、初回評価時にリ� ��パ腫を23頭中16頭(70%)で診断したが、その後の評価は使用が少なく、5週目に細胞診で診断した1頭を含むどの犬にもリンパ腫の診断となる結果はなかった。

結論と臨床関連:以上結果から、身体検査、リンパ節容積の測定は、寛解の正確な判定に十分ではなく、フローサイトメトリーのみの検査は診断方法として信頼すべきでないかもしれない。そして針吸引リンパ節細胞診は治療の修正を考慮するとき寛解状態を判定する最も正確な方法と考えるべきだと思われる。(Sato訳)

■猫における非向表皮型皮膚リンパ腫の治療でロムスチンの使用
Use of Lomustine to Treat Cutaneous Non epitheliotropic Lymphoma in a Cat
J Am Vet Med Assoc 226[2]:237-239 Jan 15'05 Case Report 13 Refs
Shinobu Komori, DVM, PhD; Shinichiro Nakamura, DVM, PhD; Kimimasa Takahashi, DVM, PhD; Masahiro Tagawa, DVM, PhD

17歳の避妊済み家猫短毛種の猫が、潰瘍、結節形成、紅斑、脱毛などの重度皮膚病変で紹介されてきた。非向表皮型皮膚リンパ腫を組織学的に診断した。内蔵の関与所見はなかったが、腎機能が低下していた。猫をロムスチン(45.5mg/u、PO、3週間)で治療し、3回目の投与後皮膚病変は改善した。重度毒性は確認されなかった。この結果は、猫の非向表皮型皮膚リンパ腫の治療にロムスチンが有効だと示唆するが、最適投与量、効果、起こりえる副作用について調査すべきである。(Sato訳)

■悪性リンパ腫の犬の血清チミジンキナーゼ活性:疾患のモニタリングと進行に対する有効なマーカー
Serum Thymidine Kinase Activity in Dogs with Malignant Lymphoma: A Potent Marker for Prognosis and Monitoring the Disease
J Vet Intern Med 18[5]:696-702 Sep-Oct'04 Prospective Study 37 Refs
Henrik von Euler, Roland Einarsson, Ulf Olsson, Anne-Sofie Lagerstedt, and Staffan Eriksson

犬悪性リンパ腫(ML)に対する腫瘍マーカーとして血清チミジンキナーゼ(sTK)活性を評価した。目的は、ヒトのようにsTKがMLの犬の生存期間に対する予後マーカーとして使用できるかどうか、そして治療犬の疾患の進行の早期症状を確認できるかどうか調査することだった。ML52頭の犬の血清サンプルで、初回TK活性を検査した。正常犬21頭と非血液系腫瘍の犬25頭のサンプルと比較した。MLの44頭を治療した。治療犬の血清TK活性を各治療前、その後再燃まで4週ごとに測定した。
平均±2標準偏差をもとに、正常犬(TK<7U/L)よりも2-180倍MLの犬(TK5-900U/L)のTK活性は高かった。他の腫瘍群で、2頭だけがコントロールよりも中程度の増加を示した(6.4と7.5U/L)。完全寛解(CR)となったMLの犬の平均sTK活性と健康なコントロール犬の活性に有意 差はなかった(P=.68)。再燃までの最低3週間前、そして再燃時の平均sTKは、CR時に測定した活性よりも有意に高かった(P<.0001)。当初sTK>30U/LだったML犬は有意に生存期間が短かった(P<.0001)。さらに、sTK活性はMLの臨床病期分類を反映していた。化学療法を行っているMLの犬のsTK測定は、臨床的に検出できる疾患の再発前に、予後および再燃を予測する強力な客観的腫瘍マーカーとして使用できる。(Sato訳)

■犬リンパ腫の化学療法に続き半身放射線療法
Chemotherapy Followed by Half-Body Radiation Therapy for Canine Lymphoma
J Vet Intern Med 18[5]:703-709 Sep-Oct'04 Prospective Study 36 Refs
Laurel E. Williams, Jeffrey L. Johnson, Marlene L. Hauck, David M. Ruslander, G. Sylvester Price, and Donald E. Thrall

リンパ腫の治療で94頭の犬に、導入化学療法後、半身放射線療法を使用した。73頭(78%)は完全寛解を達成した。サブステージ(P=.011)と表現型(P=.015)を完全寛解率の指標として認めた。うち52頭に半身照射を行った。上半身と下半身に合計8.0Gy、3週間隔でコバルト-60光子連続4.0Gyの2分画照射を行った。それらの犬の最初の寛解の中央値は311日だった。最初の寛解の長さに対する唯一認められた指標は貧血だった(P=.024)。一般に半身照射後の中毒症は、骨髄抑制と胃腸症状で、めったに見られず軽度だった。31頭は再燃し、20頭は導入後、維持化学療法による治療を再開した。70頭(85%)のイヌは2回目の完全緩解を達成した。全52頭の総寛解中央値は486日だった。
この結果は、導入化学療法後の半身放射線照射が良く許容し、従来の化学 療法のみのプロトコールに比べ緩解期間が延長するかもしれないと示唆するが、この延長は、臨床関連またはここに述べた方法の応用を正当化するに十分長いとはいえないかもしれない。(Sato訳)

■ボクサーのT-細胞由来悪性リンパ腫
T-Cell-Derived Malignant Lymphoma in the Boxer Breed
Vet Comp Oncol 2[3]:171-175 Sep'04 Brief Communication 39 Refs
D. M. Lurie, M. D. Lucroy, S. M. Griffey, E. Simonson and B. R. Madewell *

ボクサーはリンパ腫など、種々の腫瘍リスクが高い犬種である。この観察研究で、リンパ腫のボクサーから採取した組織切片を、T、Bリンパ球鑑別のため免疫染色し、一時的に選ばれたゴールデンレトリバーとロットワイラー集団のリンパ腫組織に行った同様の研究と比較した。ロットワイラーやゴールデンレトリバーよりも、ボクサーのT-細胞リンパ腫の頻度が有意に高かった(全対象P<0.001)。我々は、犬リンパ腫の免疫タイプと犬種の関連を報告した研究を知らない。他の短頭種がT-細胞リンパ腫の同様の優勢を持つかどうかさらなる研究が待たれる。(Sato訳)

■心膜滲出液と関連した心膜リンパ腫
Pericardial lymphosarcoma associated with pericardial effusion
DVM Newsmagazine、 Apr 1, 2004
By: Ronald Lyman, DVM, Dipl. ACVIM

患者が虚弱、虚脱、心拍微弱そして鈍い心音を呈したら、心膜滲出液が鑑別診断リストに挙がる。臨床医は球状の心陰影を明らかにするためのレントゲン検査の実施を選択し、続いて心膜腔内の液体を確定するための超音波心臓検査を遂行すると思われる。
一般的な診断
この時点で、出血を伴う血管肉腫、特発性そして感染性心膜炎などの一般的な診断のいくつかが直ぐに頭に浮かぶ。しかしタフツとウィスコンシン-マディソン大学による最近の研究で、心膜滲出液の原因がリンパ肉腫だったという犬の一連の症例が報告された(MacGregor et al in the Proceedings of the 21st ACVIM Forum,2003,pg 952)。もちろん確定したリンパ腫の長期の治療は、より一般的に考えられている心膜滲出液の原因と比較し明らかに異なる。これらの9症例すべてが心膜疾患と関連づいた症状を呈した。それらは虚脱が発現し、ほとんどが腹水となった。血液検査は診断に達する際、役に立たなかった。レントゲン検査や超音波心臓検査による更なる画像、心膜穿刺と細胞学的分析で腫瘍性リンパ球の存在を明らかにした。患者のうち3頭はドキソルビシンを含む複合化学療法による治療が行われ、それぞれ157日、328日以上、659日以上の生存した。心臓の問題がうまく管理できれば、生存日数は多中心型リンパ腫に匹敵した。

知識
従って、臨床医は心膜滲出液が心臓もしくは心膜リンパ肉腫の唯一の発現徴候であるかもしれないこ� �を知るべきであろう。
人医領域では細胞診が確定診断にならなければ、時に心臓もしくは心膜の生検が必要となるかもしれないことが注目されている (Gowda et al in Angiology 599-604 Sept.-Oct. 2003)。我々の獣医領域の患者において原因が断定できない難治性心膜滲出液でこのオプションを考慮すべきである。
心血管系血行力学の改善に必要であれば、開胸術によって心膜開窓されるかもしれない (Stepian et al J Small Animal Practice 2000, pgs 342-347) 。代りに、生検が行われ、ビデオ胸腔鏡下手術の遂行により心膜開窓されるかもしれない(Kovak et al, JAVMA 2002, Volume 221, No. 7)。(Dr.Kawano訳)

■イヌリンパ肉腫のカルムスチン、ビンクリスチン、プレドニゾンによる治療
Carmustine, vincristine, and prednisone in the treatment of canine lymphosarcoma.
J Am Anim Hosp Assoc 40[4]:292-9 2004 Jul-Aug
Ricci Lucas SR, Pereira Coelho BM, Marquezi ML, Franchini ML, Miyashiro SI, De Benedetto Pozzi DH

ビンクリスチン、プレドニゾンにカルムスチンを併用した化学療法プロトコールで、多中心性悪性リンパ肉腫を治療した。治療した7頭中、6頭(85.7%)は完全寛解に達した。1頭は部分反応だった。生存期間中央値は、224日(平均386日)で、寛解期間中央値は、183日(平均323日)だった。カルムスチン投与後、顕著な好中球減少が観察された。治療中血小板や赤血球数に有意な変化は見られず、血清生化学検査結果にも化学療法による異常は認められなかった。この研究結果は、カルムスチンがイヌリンパ肉腫に有効な代替選択治療であると示した。(Sato訳)


■ネコリンパ腫の治療原則
Principles of treatment for feline lymphoma.
Clin Tech Small Anim Pract 18[2]:98-102 2003 May 26 Refs
Ettinger SN

リンパ腫はネコでよく診断される腫瘍である。ネコ白血病ウイルス抗原血症はここ15年で減少し、北アメリカのネコリンパ腫の存在、ネコの特徴、部位の頻度はかなり変化している。解剖学的分類系も変化したが、ほとんどの研究は、4分類:消化器、縦隔、多中心、結節外にリンパ腫を振り分けている。各型の臨床症状と一般的な鑑別診断を述べる。ステージングは疾患の程度を評価できる。イヌのように、ネコでもリンパ腫は全身性疾患で、化学療法がほとんどの型で選択される治療である。イヌのリンパ腫と対照的に、ネコリンパ腫は治療で一般により難しく、いらいらするようなこともある。反応率は低く、寛解期間はより短い。幸い、イヌよりもネコの化学療法の毒性は低い傾向がある。陽性予後因子は、ネ コ白血病ウイルス陰性で、臨床上診断時に健康で、治療に対して反応することである。完全寛解の達成は、生存に対し予後徴候である。残念なことに反応は治療前に予測できない。(Sato訳)

■リンパ腫と白血病の犬における、血漿チミジンキナーゼ活性
Plasma thymidine kinase activity in dogs with lymphoma and leukemia.
J Vet Med Sci 59[10]:957-60 1997 Oct
Nakamura N ; Momoi Y ; Watari T ; Yoshino T ; Tsujimoto H ; Hasegawa A

犬のリンパ腫と白血病に関する血漿マーカーとして、血漿チミジンキナーゼ(TK)活性を評価しました。仮の切捨て値は、13頭の臨床的に健康な犬における血漿TK活性の平均+2SDをもとに、血漿TKの上限値として、6.0U/Lと設定しました。リンパ腫と白血病を持った20頭の犬すべてにおいて、血漿TK活性の値は、切捨て値より、高値を示しましたが、リンパ腫を持った犬における値は、化学療法後の腫瘍病変ェ解と平行して減少しました。これらの所見は、血漿TK活性の定量が、犬におけるリンパ腫と白血病に関する血漿マーカーとして用いることができるということを示唆しております。(Dr.K訳)

■上皮小体ホルモン関連タンパクとイヌリンパ腫
Parathyroid Hormone-Related Protein and Canine Lymphoma
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:19 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Kubota A, Kano R, Mizuno T, et al. J Vet Med Sci 2002;64:835-837.

イントロダクション

背景:イヌの悪性腫瘍の高カルシウム血症に良く見られる原因はリンパ肉腫である。その介在物質は通常上皮小体ホルモン関連タンパク(PTHrP)である。リンパ肉腫の40%に至るイヌが、悪性腫瘍の高カルシウム血症を起こす。これがリンパ肉腫や高カルシウム血症のイヌの罹病率や死亡率の主な原因となりえる。

目的:この報告の目的は、高カルシウム血症のイヌのリンパ腫細胞により産生されるPTHrPを評価し、高カルシウム血症ではないイヌのリンパ腫細胞により産生されるPTHrPと比較することである。

サマリー

症例報告:7歳オスのシェットランドシープドックが、食欲不振、多飲、尿失禁の評価で来院した。身体検査で、全身のリンパ腫大と脾腫が明らかとなった。検査所見は、血漿 カルシウム濃度13.7mg/dlなどだった。拡大したリンパ節の針吸引生検で、悪性リンパ球が認められた。化学療法を試みたが、3日後イヌは死亡した。腫瘍細胞のフローサイトメトリーで、T-細胞起源と一致した。高カルシウム血症のイヌの血漿PTHrP濃度は6.1pmol/lで、4頭のカルシウムが正常なリンパ腫のイヌと5頭の正常なイヌの濃度は検出不能(1.1pmol/l以下)だった。高カルシウム血症のイヌの細胞培養上澄み液のPTHrP濃度は1.3pmol/lだった。高カルシウム血症ではない他のリンパ腫のイヌの上澄みで、PTHrPは検出されなかった。
PCR法をPTHrPに関し開発した。高カルシウム血症と、高カルシウム血症ではないイヌのリンパ腫細胞は陽性だった。

結論:PTHrPは、高カルシウム血症やそうでないイヌのリンパ腫細胞により産生される。

臨床への� ��響
リンパ腫で検査した全てのイヌのPTHrPに対するPCR陽性結果は、リンパ腫産生PTHrPが高カルシウム血症を発症しないかどうかを示唆する。その方法は定量的ではなかった。そうだったとして、PCRにより判定したPTHrP産生量は、おそらく高カルシウム血症のイヌの血漿や細胞上澄み濃度でもより大きな値をとるだろう。使用したPCRは、正常犬の循環単核細胞を含む検査した全ての細胞が陽性だったので、特異性にかけていることが分かった。イヌのリンパ腫細胞がPTHrPを産生するかどうかは不明であるが、ありそうもないとはいえない。(Sato訳)

■環境のタバコの煙とペット猫における悪性リンパ腫のリスク
Environmental tobacco smoke and risk of malignant lymphoma in pet cats.
Am J Epidemiol 156[3]:268-73 2002 Aug 1
Bertone ER, Snyder LA, Moore AS

猫の悪性リンパ腫は一般的に家庭猫に発症し、ヒトにおける非ホジキンリンパ腫のモデルとして役立つかもしれない。いくつかの研究は、喫煙が非ホジキンリンパ腫のリスクを増加させると示唆している。家庭環境でタバコの煙に曝露されること(ETS)が猫の悪性リンパ腫のリスクを増加させるのかどうかを評価するために、マサチューセッツ獣医科教育病院において1993年から2000年に受診した、悪性リンパ腫の80頭の猫と114頭の腎疾患を持つコントロール猫において、この関係のケースコントロールスタディーを行った。
すべての被験者の飼い主は診断2年前までの家庭での喫煙レベルについての問うアンケートが郵送された。年齢やその他の要因を調整した後に、家庭でのETS曝露を受けているすべての猫の悪性リンパ腫の相� �的なリスクは2.4であった(95%信頼区間:1.2,4.5)。曝露の期間と量両方で比例的にリスクは増加した。ETS曝露を受けた5歳以上の猫は非喫煙家庭の猫と比較して、相対的に3.2のリスクであった(95%信頼区間:1.5,6.9,p=0.003)。これらの所見は受動喫煙が猫の悪性リンパ腫のリスクを増大させるかもしれない事と、ヒトにおけるこの関係のさらなる研究が正当化される事を示唆している。(Dr.Massa訳)

■4頭のネコの原発性気管内リンパ肉腫
Primary Intratracheal Lymphosarcoma in Four Cats
J Am Anim Hosp Assoc 39[5]:468-472 Sep-Oct'03 Case Report 29 Refs
M. Raquel Brown, DVM, DACVIM; Kenita S. Rogers, DVM, MS, DACVIM; K. Joanne Mansell, DVM, MS, DACVP; Claudia Barton, DVM, DACVIM

4頭のネコ(家ネコ短毛種n=3、家ネコ長毛種n=1;年齢範囲4-13歳)を、呼吸困難、吸息喘鳴音、喘鳴音、開口呼吸の発作など上部気道疾患の症状のため検査した。4頭の胸部、頚部エックス線検査で、気管にmassの疑いがあり、気管支鏡で確認し、気管支鏡検査時に採取したバイオプシーまたはブラシ細胞病理検査、またはその両方をもとにリンパ肉腫(LSA)と確認した。4頭中3頭のネコはレトロウイルスの検査を行い陰性結果だった。症例no.1はグルココルチコイド単独で治療し、臨床症状の無い期間は35日で再発時すぐに安楽死を行った。症例no.2はグルココルチコイドとビンクリスチンで治療した。しかし、好中球減少となり更なるビンクリスチンの投与は行わなかった。その後放射線療法を開始し、12分画合計3,991Gyを照射し� �。
合併症は観察されず、17ヵ月後もネコは臨床的に正常を維持し、胸部エックス線写真でも疾患が無い状態だった。症例no.3は、ビンクリスチン、プレドニゾン、シクロフォスファミド、ドキソルビシンを用いた併用化学療法で治療した。来院後19ヶ月、ネコは無症候性で、継続化学療法を投与しなかった。症例no.4もno.3と同様の化学療法プロトコールで治療したが、骨髄抑制と食欲不振のため、プレドニゾンを除き全ての化学療法を中止した。その後、12分画合計4,800Gyの放射線照射を行った。来院3ヵ月後呼吸器症状は無い状態だったが、前ぶどう膜炎を伴う虹彩のmass、複数の皮膚のmassが発症した。皮膚の結節は細胞病理学的にリンパ肉腫に適合した。
原発性気管内リンパ肉腫はネコでまれである。8つの文献で報告されている症例の 総数のうち、この報告で4症例が述べられている。
著者は、併用化学療法(すなわち、プレドニゾン、シクロフォスファミド、ビンクリスチン、ドキソルビシン)が、現在最小推奨療法で、放射線療法もネコ気管リンパ肉腫の治療に効果的であると締めくくる。(Sato訳)

■イヌのリンパ肉腫:診断と治療
Canine Lymphosarcoma: Diagnosis and Treatment
Compend Contin Educ Pract Vet 25[8]:584-600 Aug'03 Review Article 107 Refs
Ravinder S. Dhaliwal, DVM, MS, DACVIM (Oncology), DABVP; * Barbara E. Kitchell, DVM, PhD, DACVIM

この文献は、イヌのリンパ肉腫(LSA)に対する診断と治療について述べている。臨床、病理学でイヌLSAの広範囲な主要研究によりいくつかの結論が出されえる。現在認識されているものに、この疾患は臨床と組織学的多様性を持ち、ほとんどのケースで、生存性は多剤化学療法により改善でき、再燃疾患の治療で、薬剤抵抗性が主要な問題となることである。異なる化学療法をそれらの生存率に沿って論じる。臨床試験を行っている新しい薬剤、最終的に失敗に終わる薬剤抵抗性のメカニズムも論じている。ほとんどのオーナーは、より長く生存し良好に生活でき、副作用も比較的軽度なため、ペットに対する化学療法に非常に満足する。(Sato訳)

■リンパ腫の猫におけるクロラムブチル誘発性の間代性筋痙攣
Chlorambucil-Induced Myoclonus in a Cat With Lymphoma
J Am Anim Hosp Assoc 39[3]:283-287 May-Jun'03 Case Report 42 Refs
Noemi Benitah, DVM; Louis-Philippe de Lorimier, DVM; Michele Gaspar, DVM; Barbara E. Kitchell, DVM, PhD *

9.5歳の去勢した雄のペルシャ猫が、内視鏡検査で採材された生検標本の病理組織検査に基づいて、小腸の進行性、瀰漫性、低グレードの上皮向性リンパ腫と診断された。猫は酢酸プレドニゾロン(2.5 mg/kg,筋肉内注射、24時間ごと)とクロラムブチル(15 mg/m2 [総量4 mg], 4日間24時間ごとに経口投与, 21日ごとに繰り返し)を含む化学療法のプロトコールで治療された。 投薬の間違いによって最初の2回のクロラムブチルが12時間あけて投与され、2回目投薬の数時間後から神経病的臨床症状(攣縮と興奮からなる)が始まった。
神経症状は、頭部と肢体の筋肉痙攣を伴い、顔面の攣縮と筋硬直が猛烈に進行し、これらはしばしば異音、動作、身体の拘束により発現した。少なくとも強直間代性の発作に一致する2つの短い症状発現も観察された。極度の興奮と知覚過敏が猫に表れ、完全な神経学的検査を行うことが出来なかった。CBC、血清生化学検査、レトロウイルス試験による最小限の情報からはストレス誘導性白血球像と高血糖を除いては本質的には気づかれなかった。

クロラムブチル誘発性神経毒性の試験的診断に基 づいて、猫にはジアゼパムが投与され、補助的に静脈点滴と鼻腔食道フィーディングチューブによる経腸栄養補給を施した。48から72時間経過して神経症状が減少し、経口的にプレドニゾロンとシプロペプタジンを開始した。4日後(96時間後)、神経症状は解決し、継続栄養補給のために経皮胃フィステルチューブが設置された。その後にモディファイCOP(サイクロフォスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロン)プロトコールが紹介した獣医師によって行われた。
クロラムブチルは様々な調子を整えるため、そして免疫介在性皮膚病、血液病、腎臓病で免疫抑制剤として処方されている。高用量は最も一般的と解釈されている副作用である骨髄抑制と胃腸毒性の可能性の増加と関連づけることが出来る。
この報告 に基づいて、間代性筋痙攣または強直間代性発作として現れる神経毒性は獣医患者におけるクロラムブチル療法の副作用の可能性としてよく検討されなければならない。症状は薬の中止と支持的なケアーで解決する。(Dr.Massa訳)

■イヌの中枢、末梢神経系を巻き込んだ血管内リンパ腫
Intravascular Lymphoma Involving the Central and Peripheral Nervous Systems in a Dog
J Am Anim Hosp Assoc 39[1]:90-96 Jan-Feb'03 Case Report 16 Refs
* William W. Bush, VMD, DACVIM; Juliene L. Throop, VMD; Patricia M. McManus, VMD, PhD, DACVP; Amy S. Kapatkin, DVM, DACVS; Charles H. Vite, DVM, DACVIM; Tom J. Van Winkle, VMD, DACVP

5歳去勢済みの雑種犬が、5ヶ月にわたる不全対麻痺、運動失調、知覚過敏、血小板減少と、ここ2週間に起きた再発性の発作で来院した。全身身体検査で、呼吸数の軽度増加と努力性が認められた。神経学的評価で、多病巣性神経疾患が疑われ、首から尾までの脊椎筋肉組織の触診で重度の知覚過敏があった。全血検査で、慢性疾患の貧血、過去にコルチコステロイド投与を示す血清生化学プロフィールを示した。リケッチア、球虫、真菌、ウイルス血清学検査は異常なかった。胸部エックス線写真で、無気肺または肺炎と一致する軽度間質性パターンを示し、血液ガス評価で、低い正常酸素と二酸化炭素濃度、肺胞-動脈酸素勾配の上昇を示した。
入院して次の日、脳脊髄液(CSF)サンプルを採取し、分析結果は、CSFの出血と炎症の可� ��性を示した。好気性培養は陰性だった。プレドニゾン、抗生物質、鎮痛薬の投与にもかかわらず、患者の神経学的状態に目に見える改善は起こらなかった。入院3日目、脳と頚部のMRI検査を実施した。脳幹、小脳、大脳半球、右側室、背髄、髄膜に病変が見られた。鑑別診断に、感染/炎症または円形細胞腫瘍が上げられた。その後、CTガイドのバイオプシーを、右側頭葉に行い、血管内リンパ腫の細胞病理学と組織病理学所見を得た。疾患はプレドニゾン、L-アスパラギナーゼ、ビンクリスチンの化学療法を行っても進行した。そのイヌは、心臓(不整脈、高血圧)、皮膚(角化亢進、鼻梁背側の苔癬化)、呼吸器(誤嚥性肺炎、肺の血栓塞栓症の疑い)の合併症を併発し、安楽死と検死を決断した。組織病理学検査で、血管内リンパ腫は複� ��の器官(例えば、肺、神経、眼科、胃腸、内分泌、心臓)に及んでいた。免疫組織化学検査で腫瘍はT-細胞リンパ腫と示唆された。皮膚の変化は脈管障害と一致し、骨髄は侵されていなかった。
血管内リンパ腫は、血管の壁や管腔内で腫瘍性のリンパ球の増殖である。腫瘍細胞の血管の進行性の閉塞により血栓症、出血、梗塞を導く。よく神経症状が目立つ多システム系の疾患である。著者の知識によれば、これはイヌの中枢神経系を巻き込んだ血管内リンパ腫の生前診断と治療を行った最初の記述である。(Sato訳)

■フロセミドの併用する、またはしないでサイクロフォスファミドを投与しているリンパ腫の犬における無菌性出血性膀胱炎の危険因子:216症例(1990-1996)
Risk Factors for Sterile Hemorrhagic Cystitis in Dogs with Lymphoma Receiving Cyclophosphamide With or Without Concurrent Administration of Furosemide: 216 Cases (1990-1996)
J Am Vet Med Assoc 222[10]:1388-1393 May 15'03 Retrospective Study 27 Refs
Sarah C. Charney, DVM; Philip J. Bergman, DVM, PhD, DACVIM; Ann E. Hohenhaus, DVM, DACVIM; Josephine A. McKnight, DVM, DACVIM

目的:サイクロフォスファミドで治療を受けているリンパ腫の犬における、無菌性出血性膀胱炎(SHC)の発生率を決定し、罹りやすくする因子を見極め、またサイクロフォスファミドと同時に利尿剤の静脈投与がSHCの発生率を減少させるかどうか評価すること

構成:回顧した研究

動物:リンパ腫の犬216頭

方法: フロセミドの静脈投与の併用をする、またはしない2つのプロトコールのうち1つに従って、サイクロフォスファミドで化学療法を受けているリンパ腫の犬216頭の医療記録が調査された。2グループのデータはサイクロフォスファミドに関連したSHCの発生率と素因(年齢、品種、性別、体重、以前のまたは既存の病気、以前のまたは既存の尿路感染症、好中球減少症、窒素血症、薬用量、サイクロフォス� �ァミド治療の回数)を決定するために調査された。

結果:サイクロフォスファミドに関連したSHCは、サイクロフォスファミドの治療に、フロセミドの同時投与を受けていない133頭中12頭(9%)で発症した。フロセミドを投与している83頭のうち、1頭(1.2%)だけにSHCが発症した。同時にサイクロフォスファミドとフロセミドの治療を受けている犬はフロセミドの治療を受けていない犬よりもSHCの発症が有意に減少していた。過去、または既存の免疫介在疾患を持っている犬は、有意にサイクロフォスファミドに関連したSHCを発症しやすかった。

結論と臨床への関連性:結果の分析は、サイクロフォスファミドと同時のフロセミド静脈投与とサイクロフォスファミドに関連したSHCの発生率の低下には関係があることを示唆し ている。
サイクロフォスファミドに関連したSHCの発生率は、フロセミドを同時投与せず治療した犬と、サイクロフォスファミドを経口投与した他の報告とで類似している。
サイクロフォスファミドに関連したSHCは、フロセミドをサイクロフォスファミドと同時に投与されなかったときに化学療法クールの早期に発現する。(Dr.Massa訳)


■ネコ上皮向性腸管悪性リンパ腫:10症例(1997-2000)
Feline Epitheliotropic Intestinal Malignant Lymphoma: 10 Cases (1997-2000)
J Vet Intern Med 17[3]:326-331 May-Jun'03 Retrospective Study 26 Refs
Janet K. Carreras, Micheal Goldschmidt, Martin Lamb, Robert C. McLear, Kenneth J. Drobatz, Karin U. Sorenmo

上皮向性腸管悪性リンパ腫(EIL)のネコ10頭の臨床、組織病理学、免疫組織化学的特徴を述べる。腸管バイオプシーのサンプルをEILの診断確認のために3人の病理学者により再検討した。それらのサンプル(n=10)は、正常なネコの腸管バイオプシー(n=11)、炎症性腸疾患のネコ(IBD;n=7)、非EILのネコ(n=9)の上皮内リンパ球の定量と免疫表現化に対して比較した。免疫表現性の研究は、T-そしてB-細胞免疫反応性を評価するために、それぞれCD3そしてCD79抗体染色で行った。
EILバイオプシーの上皮内リンパ球は、正常な腸管(NRL)やIBDのネコのサンプルよりも顕著に多かった。しかし、非EILとEILのネコの上皮内リンパ球数は、顕著な差は見られなかった。組織学的診断に関係なく、すべてのネコの上皮内リンパ球は小−中サイズのT細胞� �った。臨床所見と画像検査で、罹患ネコに最小限または非特異的所見が認められた。ネコの多くは、IBDまたは消化管悪性リンパ腫の典型的なプロフィールに合致した。EILの10頭のネコのうち9頭は、プレドニゾンと追加の化学療法を併用し、または併用しないで治療した。4頭は化学療法に抵抗し、3.5ヶ月以内に安楽死した。残りの5頭は、11ヶ月以上長期生存した。生存期間の中央値は11ヶ月だった。EILをよりよく特徴づけ、IBDのネコ、非EILとその関連、この疾患の最適な治療法の判定のため、更なる研究が必要だろう。(Sato訳)

■イヌの多中心型リンパ腫における発生率と病原ファクターの回顧的研究(1998-2000)
A retrospective study of the incidence and prognostic factors of multicentric lymphoma in dogs (1998-2000).
J Vet Med A Physiol Pathol Clin Med 49[8]:419-24 2002 Oct
Jagielski D, Lechowski R, Hoffmann-Jagielska M, Winiarczyk S

多中心型リンパ腫の63頭の犬で、疾患のリスクに関し評価を行った。他の犬種に比べ、ロットワイラーのリスクが最大と考えられた(オッズ比6.01、他犬種は0.32-2.75)。化学療法を行った43頭のグループで、最初の寛解期間や生存期間に影響を及ぼすと定義したファクターを評価した。化学療法の結果の最重要ファクターは、治療への反応、診断時のWHOに従った疾患のステージ、サブステージだった。(Sato訳)

■リンパ腫の犬に対する維持療法を行わない6ヶ月化学療法プロトコールの評価
Evaluation of a 6-Month Chemotherapy Protocol with No Maintenance Therapy for Dogs with Lymphoma
J Vet Intern Med 16[6]:704-709 Nov-Dec'02 Clinical Study 36 Refs
Laura D. Garrett, Douglas H. Thamm, Ruthanne Chun, Robert Dudley, David M. Vail

この研究の目的は、犬のリンパ腫の治療にCHOP(Hはドキソルビシン、Oはビンクリスチン)を基本とし、維持期を含まない化学療法プロトコールと、維持期を含む同様のプロトコールを比較する事だった。多中心型リンパ腫の犬53頭を、ウィスコンシン大学(UW)-マジソン化学療法プロトコール(UW-25)6ヶ月修正バージョンで治療した。疾病フリー期間(DFI)と生存期間を、過去に長期維持期を併用し、同じプロトコールで治療した55頭のコントロール群と比較した。研究犬の緩解率は94.2%(完全緩解92.3%、部分緩解1.9%)だった。研究犬の疾病フリー期間と生存期間の中央値は282日と397日で、コントロール犬のそれぞれ220日、303日と比較すると、その値に有意差はなかった(P=.2835とP=.3365)。
一変量解析で、生存期間を有意に短くする 指標として、サブステージb(P=.0087)、ジャーマンシェパード種(P=.0199)、体重>18kg(P=.0016)が認められた。より長い生存期間は、血小板減少症と関連があった(P=.0436)。多変量解析で、サブステージ(P=.0388)と体重(P=.0125)は疾病フリー期間に有意性を持ち、サブステージ(P=.0093)と血小板減少症(P=.0150)そして体重(P=0.0050)が生存期間に有意性を持つことが明らかとなった。全体的に、そのプロトコールに対し犬は良く許容し、41.5%(22/53)の犬は治療の延長や投与量の修正を必要としたが、9.4%(5/53)の犬しか入院を必要としなかった。維持期を併用しないCHOPベースの6ヶ月化学療法プロトコールは、長期維持期を併用した同様のプロトコールと比較した時、同様の疾病フリー期間や生存期間を得ることができる。(Sato訳� �

■犬の抵抗性リンパ腫のMOPP化学療法による治療:117症例(1989-2000)の回顧的研究
MOPP Chemotherapy for Treatment of Resistant Lymphoma in Dogs: A Retrospective Study of 117 Cases (1989-2000)
J Vet Intern Med 16[5]:576-580 Sep-Oct'02 Retrospective Study 26 Refs
Kenneth M. Rassnick, Glenna E. Mauldin, Renee Al-Sarraf, G. Neal Mauldin, Antony S. Moore, Samantha C. Mooney

この回顧的研究の目的は、リンパ腫の犬のレスキュー処置としてMOPP化学療法プロトコール(メクロレタミン、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾン)の効果と毒性を評価することだった。以前投与した化学療法に抵抗性を示した117頭の犬を評価した。MOPPの治療前に、全ての犬は中央値213日の間、中央値6種類の化学療法剤を投与されていた。MOPPで31%(117頭中36頭)は、中央値63日間の完全緩解(CR)、34%(117頭中40頭)は中央値47日間の部分寛解(PR)を得られた。16%(117頭中19頭)は中央値33日間の安定疾患(SD)が得られた。MOPPに対する反応の予測値はわからなかった。
胃腸毒性は28%の犬(117頭中33頭)で発生し、13%の犬(15頭)は入院が必要だった。5頭は敗血症を発症し、最終的に2頭死亡した。MOPPは抵抗性リンパ� ��の効果的な治療で、罹患犬の大多数がその治療に良く耐えた。(Sato訳)

■ネコリンパ腫の最新情報
What Is New On Feline Lymphoma?
J Feline Med Surg 3[4]:171-176 Dec'01 Proceedings 0 Refs
C Guillermo Couto

リンパ腫の組織学的、病理組織学的診断が成されると、予後や使用可能な治療オプションについて通常オーナーと話し合う。ネコリンパ腫の寛解率は、種々の化学療法プロトコールで治療した場合、約65-75%です。リンパ腫の多くは、多剤化学療法プロトコール(±外科手術および/または放射線療法)を行ったとき6-9ヶ月生存すると予想され、約20%は1年以上生存する。FeLV陽性猫の予後は悪く、陰性猫の生存期間はより長い(すなわち、9-18ヶ月、構造形態に依存する)リンパ腫非治療猫の生存期間は約4-8週間である。犬のリンパ腫よりも猫のリンパ腫の生存期間が短い最大の理由は、腫瘍が再燃した時、寛解への再導入が難しいからだと思われる。
私の経験では、ネコがステージ1の結節外リンパ腫で来院した時でさえ、その病気の全� �性播種が診断後数週から数ヶ月の間に通常起こる。それゆえ、ネコリンパ腫の治療の要は、リンパ腫は全身性の腫瘍(結局はそうなる)という観点から化学療法である。外科手術および・または放射線療法は、化学療法前、または化学療法中に局所リンパ腫の治療に用いられる。この項で、リンパ腫の管理に対する一般的なガイドラインを述べる。この章で推奨されるプロトコールは、我々の病院で使用しており、文献で発表されている他の治療に匹敵する成功率を持つ。(Sato訳)

■腸管T細胞リンパ肉腫の猫に見られた過好酸性腫瘍随伴症候群
Hypereosinophilic paraneoplastic syndrome in a cat with intestinal T cell lymphosarcoma.
J Small Anim Pract 43[9]:401-5 2002 Sep
Barrs VR, Beatty JA, McCandlish IA, Kipar A

10歳、避妊済みメスの家猫短毛種が、最近になって体重減少、多飲多尿、下痢、嘔吐で来院した。身体検査で、腸管の肥厚と腸間膜リンパ節の拡張が明らかになった。臨床検査で、末梢血の好酸球増加、好酸球が増えた腹水、好酸性腸間膜リンパ節炎が見られた。グルココルチコイドの治療に一時的に反応したが、症状は進行し、安楽死した。組織検査で、小腸と腸間膜の好酸球浸潤と繊維増殖が見られた。小腸と腸間膜リンパ節の細胞周囲腫瘍性の大きな集合体は、免疫組織化学検査でTリンパ球と判定された。腸管T細胞リンパ肉種の診断が下された。この症例は、過好酸球性腫瘍随伴症候群がリンパ肉腫の猫に発生するかもしれないと示している。好酸球の走化性は、腫瘍リンパ球のインターロイキン-5の産生に反応するのかもしれな い。(Sato訳)

■間接喫煙とネコの悪性リンパ腫の危険性
Bertone ER, Snyder LA, Moore AS : Am J Epidemiol 156[3]:268-73 :Environmental tobacco smoke and risk of malignant lymphoma in pet cats.

ネコの悪性リンパ腫は人の非ホジキンリンパ腫の疾病モデルにされており、いくつかの研究は喫煙が非ホジキンリンパ腫の危険性を高めるかもしれないと報告している。室内での間接喫煙がネコの悪性リンパ腫の危険性を高めるか評価するために、80頭の悪性リンパ腫のネコ、114頭の腎疾患と診断された例について検討を行った。
このすべてのオーナーに、病気の診断からさかのぼること2年、室内での喫煙の程度に関する質問表を送付した。年齢やその他の要因を調節したところ、室内で間接喫煙に曝されていたネコの悪性リンパ腫の罹患率は2.4倍(95%信頼区間は1.2、4.5)であった。危険性は、暴露期間と暴露量に直線的に比例しているようであった。5年以上暴露していたものでは危険率が3.2倍(95%信頼区間は1.5、6.9� ��であった。これらのことから受動喫煙はネコにおいても悪性リンパ腫の危険性を高めることから、人でも更なる検討が必要である。(Dr.Tako訳)

■猫の悪性リンパ腫に対する化学療法シクロフォスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロン(COP):古いプロトコールの最新結果
Erik Teske et al; J Vet Intern Med 16[2]:179-186 Mar-Apr'02 Retrospective Study 31 Refs; Chemotherapy with Cyclophosphamide, Vincristine, and Prednisolone (COP) in Cats with Malignant Lymphoma: New Results with an Old Protocol

猫白血病ウイルス(FeLV)があまり蔓延していないオランダで、悪性リンパ腫の猫61頭に対し、確立した化学療法プロトコール(シクロフォスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロン[COP])の効果を調査する回顧的研究を行いました。22頭(36.1%)は縦隔型リンパ腫で、11頭(18.0%)は消化器型リンパ腫、7頭(11.5%)は末梢リンパ腫、8頭(13.1%)は鼻部リンパ腫、13頭(21.3%)は種々のリンパ腫(腎型リンパ腫2頭:3.3%を含む)でした。検査した54頭のうち、FeLV陽性はたった4頭(7.4%)でした。完全寛解(CR)は61頭中46頭(75.4%)で達成しました。完全寛解した46頭の1年、2年−病気フリー期間はそれぞれ51.4%と37.8%でしたが、寛解� ��間の中央値は251日でした。全体の1年生存率は48.7%で、2年生存率は39.9%、生存期間中央値は266日でした。縦隔型リンパ腫の生存期間中央値と1年生存率は262日と49.4%でした。他の種類より生存や寛解に対するシャムネコの予後はより良いものでした。この研究で、治療に対する反応はかなり予後を示すものとなりました。完全寛解は長期生存に欠かせません。完全寛解に達しなかった猫は、1年以上生存する機会がほとんどなくなりました。この研究の若いシャムネコは、全頭FeLV陰性で若齢時に縦隔悪性リンパ腫をより強く発病する傾向にありました。異なる組み合わせの化学療法プロトコールを行った他の研究報告と比較すると、今回の結果は、悪性リンパ腫の猫で高い寛解率とより長期の生存率を� ��しています。(Sato訳)


■リンパ腫と骨肉腫の犬における亜鉛、クロム、鉄の血清濃度
Kathy J. Kazmierski et al; J Vet Intern Med 15[6]:585-588 Nov-Dec'01 Clinical Study 22 Refs ;Serum Zinc, Chromium, and Iron Concentrations in Dogs with Lymphoma and Osteosarcoma

我々は癌の犬の亜鉛、クロム、鉄の血清濃度を正常犬と比較した。リンパ腫(n = 50)と骨肉腫(n = 52)の犬を評価した。リンパ腫の犬は平均亜鉛濃度(平均±SD; 1.0±0.3 mg/L)が、正常犬(1.2±0.4 mg/L)と比較して有意に低値(P = .0028)であった。骨肉腫の犬でも平均亜鉛濃度は低値(1.1±0.4 mg/L)であったが、この差違は有意ではなかった(P = .075)。血清クロム濃度は正常犬(4.7±2.8 ug/L)と比較して、リンパ腫(2.6±2.6 ug/L, P = .0007)と骨肉腫(2.4±3.1 ug/L, P = .0001)の犬で有意に低値であった。血清鉄濃度と総鉄結合容量は、正常犬(それぞれ175.1±56.7ug/dLと277.1±47.4 ug/dL)と比較して、リンパ腫(それぞれ110.8±56.7 ug/dL, P < .0001,と236.6± 45.6 ug/dL, P < .0001)と骨肉腫(それぞれ99.6±49.3ug/dL,P<.0001,と245.0±43.8 ug/dL, P = .0011)の犬で有意に低値であった。フェリチン濃度の中央値は、正常犬(805.8±291.1 ug/L,P<.0001)と比較して、リンパ腫(1291.7±63.0 ug/L)と骨肉腫(826.5±309.2 ug/L, P <.0001)の犬で有意に高値であった。癌の犬における、これらのミネラル異常の臨床的意義を診査するためには、さらなる調査が必要である。(Dr.Massa訳)

コメント:リンパ腫と骨肉腫においては血清中の亜鉛、クロム、鉄濃度が低値になるという文献です。
腫瘍性疾患におけるミネラル定量検査は臨床の現場ではあまり一般的ではありません。今回の文献内容からすると腫瘍の代謝系への関与はありそうですので、これからの研究によって亜鉛、クロム、鉄などの血清ミネラル量が疾患の重症度や予後の判定に役立つようになるといいですね。



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